1.降谷さんの初陣。
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。何としてでも取引成立前に情報を集めるんだ。そして状況に応じて、彼女を保護するか、確保するか……利用しろ」
「……!」
一瞬目を見張ってしまった。……だがきっと、公安とはそういうもの、なのだから。
「承知しました」
「……きみはやはり察しがいいようだな」
最悪、彼女を組織潜入の足掛かりにしろ。
先輩はそう言ったのだ。
「この件に関しては俺が教育係としてサポートする。以後は別の人間が一人つくだろう」
「はい!」
真剣な顔でそう言う先輩に僕はしっかりと頷く。
「俺はきみみたいな優秀な人間を早々に潰したくないんでね。それは上も同僚もみんな同じだろう。なりふり構わず、細かいことでも相談するように。いくらきみが優秀でも、こんな最初から独りで何でもできると思わないことだ」
ふと、卒業前既に爆処からスカウトを受けていた同期二人のことが浮かんだ。松田は即決していたが、萩原ははじめ悩んでいた。そして悩んだ末にきちんと決めた。
伊達もコンビニの一件からどこか吹っ切れたような様子で、ますます真っ直ぐに進んできたと思う。
そして卒業後連絡が来なくなった景光ヒロを思う。きっと皆に何も返せない僕と理由は同じだ。
固い決意で未来を選んだ皆は、きっと今も隣で一緒に前を見ている。
「僕も潰れる気はありません。ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」
僕は僕で、愛しい愛しいこの国を守りたい。だからそのためには何もかもを利用する。
敬礼した僕に、先輩はニッと笑った。頼もしい笑顔だった。
自己紹介時点でこんな人間は本当は居ないんだぜ、変装だ、と先輩が自ら言ってきて、公安の秘密主義もたいがいだと思ったが、でもどこかでこの人にならついていけるという気がしていた。
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「この一件の間だけの、きみの偽名と各種身分証明書とスマホ」
「ありがとうございます」
「余程のことがなきゃ、『お前の教育係だった』っていう、今後近くにいるべきでない俺がお前の偽名を把握しないために、次に引き継がれない」
「承知しました」
「淋しいくらい言ってくれよ」
「無理もないと思いますから」
「かわいくねえなあ」
じゃれ合いのような会話をして思わず笑ってしまう。けれど先輩はすぐに真剣な顔をした。
「降谷零じゃない別人を作り出せ。性格などを自分で設定してみろ。まずはそうだな……彼女は夜独りで飲み歩いてるらしい。近づきやすいのはどういう人間だと思う?」
眉をひそめる。防犯意識が過激になるくらいの過去を持っておきながら、そんな……いや。
「……彼女はわざと妙な輩に絡まれようとしているんで
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