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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第219話:アドリブ、試される時
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」
「そ、そうだ! 貴様、指輪は持っているのか!」
「指輪……!」
輝彦の言葉に査察官の片方が相手を指差しながら問い掛ければ、もう1人の査察官はハッとした顔で懐に手を突っ込み5つの指輪を取り出した。
「持っているに決まっているだろうがッ!」
「ほらねッ!」
自身が本物である証拠を片方の査察官が見せつけると、もう片方の査察官はそれを指差しながらさも当然の様に頷いた。否定ではなく肯定を示す指輪を持っていない査察官に、周囲が困惑していると輝彦が2杯目の紅茶をカップに注ぎながら指輪を持っていない方の査察官に声を掛けた。
「そこまでにしておけ。あまり悪ふざけをするんじゃない、颯人」
「へ〜いへい。だって暇なんだもんよ〜」
そう答える査察官の声は、もう先程までの査察官のものではなくなっていた。顔は査察官そのものなのに、口から出てくる声は弦十郎も良く知る颯人のそれであった。
「は、颯人君?」
「そだよ〜」
信じられないと言った声を上げる弦十郎に対し、査察官に化けた颯人は顔の皮を引っぺがす様に変装を解いた。特殊メイクを剥がすと、そこには何時もの笑みを浮かべた颯人が周囲の反応を見て楽しんでいた。
「ふぃ〜、どうよ俺の変装術? なかなか様になってただろ?」
「まぁまぁと言ったところだな。精々精進する事だ」
「うへ、厳しい……」
等と他愛ない颯人の変装術に対する批評などを聞いていた査察官は、この親子に揶揄われていた事に気付くと顔を赤くして烈火の如く怒りを露わにした。
「ふざけるな貴様ッ!? 良いからとっとと出ていけっ!!」
「分〜かった分かったよ。大人しく退散しますかね」
「颯人君……頼むから、あまり騒ぎを起こしてくれるなよ」
「へいへい」
査察官の怒声に背を向けて扉へと向かう颯人。直後に発令所に颯人の見張りをしていた隊員が慌てた様子で飛び込んできて、少し目を離した隙に姿が見えなくなっていた颯人がここに居る事に面食らう。
「申し訳ありませんッ! 少し目を離した隙に監視対象が、って!?」
「ん〜、お勤めご苦労さん」
「何をしている貴様らッ! さっさとその男を連れていけッ!」
「ハッ!」
怒り心頭と言った様子の査察官に急かされる形で、隊員達は颯人の両脇を抱える様に連れていく。
その最中、颯人は一瞬だけ輝彦と目を合わせると、アイコンタクトだけでやり取りをした。
――んじゃ、後は任せるよ――
――全く……――
言葉もなく互いに意思疎通をこなすと、輝彦は小さく溜め息を吐き未だ怒りが収まらない様子の査察官に紅茶の入ったカップを差し出した。
「息子がすまんな。昔からああなんだ。後で良く言い聞かせておくから、まぁ、これでも飲んで落ち着いてくれ」
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