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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第219話:アドリブ、試される時
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火をつけ、湯を沸かして紅茶を淹れる輝彦にやっと再起動した査察官が頬を引き攣らせながら問い掛ける。その声に反応して輝彦は顔を上げると、今一度懐中時計を取り出して時間を確認しそれを査察官にも見せた。
「もう3時だ。3時と言えば午後のティータイムだ、分かるだろ?」
「貴様、状況分かっているのか?」
周囲を銃を持った男に取り囲まれた状態で、平然とティータイムと洒落込もうとするその神経が理解できず査察官が震える声で問い掛ける。彼には輝彦の行動が、自分達を小馬鹿にしているように映ったのだろう。実際、殆ど銃で脅されているも同然の状況で暢気に午後の紅茶を楽しもうなどとすれば正気を疑うか、舐められているかを考えるのは当然だ。
それを理解しているのかいないのか、輝彦は顔に血管を浮かべそうな査察官の顔を見て彼の分のティーカップも用意し始めた。
「何だ、お前も飲みたいのか? いいぞ、何にする? 茶葉なら色々と取り揃えている。アールグレイにダージリン、アッサムにウバ、ヌワラエリアなんかも――」
「そうではないッ! 誰も茶葉の話なんかしとらんッ!」
「紅茶は嫌いか? 安心しろ、コーヒーに緑茶の用意もある」
「だからッ!? 誰が茶を飲みたいなどと言ったかッ!?」
態となのかそれとも素なのか、噛み合わない会話に査察官が血管がブチ切れるのではないかと言うくらい怒りを露わにする。しかしそんな怒りなど柳に風と言った様子で受け流し、暢気にカップに入った紅茶を啜りスコーンに手を伸ばす輝彦。怒り狂った査察官がテーブルに手を叩きつけようと振り上げたその時、その背後から査察官と同じ声が響いた。
「き、貴様何をしているッ!? と言うか何者だッ!?」
「何?」
「ふむ?」
「んんッ!?」
背後から聞こえてきた声に査察官が振り返ると、そこにはもう1人の査察官の姿があった。2人の査察官と言う光景に周囲の職員や隊員は勿論、弦十郎も困惑した様子で2人の査察官を交互に見ている。落ち着いているのはティーカップに口をつけている輝彦ただ1人だ。
輝彦が見ている前で、2人の査察官は互いに相手を指差し合って相手に何者かを問い合うと言う不毛な言い争いを始めた。
「貴様何者だッ!」
「貴様こそ何者だッ! 私に化けるなど、何を考えているッ!」
「私は日本政府から派遣されS.O.N.G.の査察を言い渡されたッ!」
「私だってそうだッ!」
「嘘を吐くなッ!」
「何を証拠にッ!」
声から仕草、外見まで何もかもがそっくりな2人。どちらが本物かなど分かる訳が無く、自衛隊の隊員もどちらを拘束すべきか分からず右往左往していた。
そんな中、カップの中身を飲み干した輝彦が徐に口を開いた。
「本物なら颯人から受け取った指輪を持っているんじゃないのか?
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