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金木犀の許嫁
第三十四話 妹達への提案その四

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「地下鉄で」
「何なら歩いていけるわね」
「行こうと思えばね」
「そんな距離よね」
「歩くと結構な距離あるけれど」 
 それでもというのだ。
「行こうと思えばね」
「行けるわね」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「あそこにもね」
「行くといいわね」
「そう、難波から近いし」
「行くといいのね」
「そうよ、織田作さんみたいに二人でね」
 夜空と佐京でというのだ。
「そうしたらね」
「いいのね」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「一緒にね」
「難波だけじゃなくて」
 夜空は真剣な顔で答えた。
「織田作さん由縁の場所を巡っていけばいいのね」
「許嫁同士のデートでね」
「まだ結婚していなくても」
「将来は夫婦になるから」
 だからだというのだ。
「そうしていってね」
「わかったわ、しかし織田作さんって生粋の大阪人だってね」
 夜空は今はめでたい幽霊となって大阪中を巡って楽しんでいる彼のことを思いながらそのうえで姉に話した。
「つくづく思ったわ」
「だから生まれも育ちも大阪でね」
 真昼は笑顔で答えた。
「暮していたのも大阪だったから」
「今も大阪におられて」
「生前の人生の殆どを大阪で過ごしていたのよ」
「そして幽霊になってもう」
 ここでだ、夜空は織田が亡くなった昭和二十二年から考えて述べた。
「八十年近く経ってるわね」
「その八十年近くの間ずっとよ」
「大阪におられるから」
「もうね」
 それこそというのだ。
「生粋のよ」
「大阪人ね」
「実際大阪を愛していたから」
 生まれて育った街をというのだ。
「本当にね」
「生粋の大阪人ね」
「食べることが大好きだったしね」
「そこも大阪人ね」
「そうでしょ、大阪は町人の街って言われてるけれど」
「まさに町人さんね」
「武士じゃなかったから」
 ただしその家紋は織田信長の織田家のものと同じである。
「本当にね」
「生粋の大阪人ね」
「庶民の中で生まれ育って」
 大阪のというのだ。
「庶民の中で生きたね」
「そうした人ね」
「そうよ、ただね」
 ここで真昼は悲しい顔になってだった、夜空に話した。
「若くして亡くなってるから」
「三十四歳よね」
「結核でね」
 このことを残念そうに話した。
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