暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第218話:双翼の不協和
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めて落ち着いて彼女を落ち着けようとする。だがそれが逆に彼女を追い詰めた。颯人を除いて奏に最も近い人間であるからこそ、翼は理解していた。奏がどれ程颯人の事を大事に思っていて、今もどれ程の不安を感じているかを。その不安の遠因に自分も居ると考えると、翼は心穏やかではいられなかった。

「別に翼が何かしたって訳じゃないし、あの状況は颯人が自分から選んだ事だ。確かに颯人の事は心配だよ。だけど、それはそれこれはこれだ。アタシは翼が悪いなんてこれっぽっちも思っちゃいないから――」
「そんな簡単な話じゃないッ!? どう足掻いても、私には防人の血が流れてる。その防人の血が、どこかで颯人さんの扱いを肯定してしまっているんだ……」
「それは気のせいだッ! 何度も言うが、翼は……」
「どうしてそこまで信じられるのッ!」
「じゃあどうすればいいんだよッ!」

 遂に翼だけでなく奏までもが声を荒げた。それまで堪えていたものが噴き出したかのような奏の声に、翼は肩をビクンと震わせエルフナインも歌うのを中断してしまった。音楽以外何も聞こえなくなった室内の様子に、我に返った奏は辺りを見渡し怯えた目を向ける翼を見て思わず目を泳がせる。

「ぁ……ぁ、悪い。違うんだ翼。アタシは、別に……」

 久し振りに翼の事を怒鳴ってしまった。その事に居た堪れなさと申し訳なさを感じた奏は、翼に何と言葉を掛ければいいか分からなくなってしまい、意味のない言葉を口にしながら手を伸ばすしか出来なくなる。すると翼は、自分に伸びてきた奏の手に思わず立ち上がると顔を伏せて部屋から出て行ってしまった。

「ゴメン……少し、頭を冷やしてくる」
「あ、翼……」
「「「翼さんッ!」」」

 奏と響達が呼び止める言葉も無視して部屋から出て行ってしまった。彼女の後ろ姿に奏は一瞬その後を追おうと一歩足を前に踏み出すが、もう片方の足はまるでその場に縫い付けられているかのように動かなかった。

 足が動かない事に奏が唖然としている間に、翼の姿は見えなくなり慌てて後を追おうとした響が扉から顔を出した時には翼は角を曲がっていってしまっていた。
 もう今からでは後を追っても追いつけそうにない。何より振り返ればそこには唖然とした奏が居る。どちらを優先すべきか分からなくなった響は、思わず未来、エルフナインと顔を合わせ不安そうに何度も部屋の中と外を交互に見るしか出来ないのだった。
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