第107話 まっとうな軍人
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違ですが、弊社の装甲材の採用を決断したのはあちら様なのですよ?」
「ゼロの数の書き間違いを指摘するのは、まず当然だと思うんですがね」
その装甲材の価格を軍への納入価格に転嫁した場合、初期ロットで既存の巡航艦の一〇倍近い価格になってしまう。量産契約が済めばより低減できるだろうが、今の情勢では価格が提示された段階で選考外だ。
勝手な推測だが現時点で既に試験運用可能な試作艦艇が出来ているのに、原作でタイプネームの一桁番号が実戦配備されたのが七年後というのは、書かれていない設計上の大問題がない限り、調達価格の問題だろう。大侵攻の後始末でただでさえ金がない上に、まず数が重要という時期に高級品を敢えて建造するのはためらわれる。
オネーギン氏としては最初から継続的に装甲材を『自社』から購入してもらおうとは考えてはいない。なにしろ軍艦の装甲材だ。膨大な生産量が求められるから他社にOEM生産してもらうのは当然で、技術料を買い叩かれるのは困るのは理解できる。吹っ掛けてくるのはある意味当然だが、敢えて資本力に劣る中小企業であるSRSBに話を持ち掛けたという点が、実に氏の上司の思惑を考えると嫌らしい。
顔による脅しも効果がないと分かったのかオネーギン氏は大きく溜息をつくと、前のめりの姿勢を崩してソファの背に深く腰掛け直し、呆れたと言わんばかりに足を組んで右腕を軽く振り上げる。
「具体的に私たちに何をお望みなんです、中佐」
賄賂でもキックバックでも欲しいのか、と目が語っている。確かに要求するタイミングとしては絶好だろうが、残念ながら俺はそういう人間ではない。
「特には何も。ただ市場価格に見合った、良識的な範囲での金額をご提示いただければいいだけです」
俺の言葉にオネーギン氏の右眉が吊り上がる。それが計算されたものかどうかは分からないが、交渉時に見せていい仕草ではない。工作員としてはどちらかと言えば武断的な分野を扱う人物なのだろう。かなり大きな『シノギ』だと思うが他に人材はいなかったのか。あるいは別に責任者がいて、俺が出てきたから彼が対応しているのか。
「弊社がこの装甲材を開発するのに支払った投資額を回収するのは、良識的にも決して間違ったものではないと思いますがね?」
「ええ、そうですね。プレヴノン・MM社の研究結果としてでしたら、お支払するのは間違いないですね」
「この装甲材は画期的なものです。硬度・エネルギー防御力、いずれをとっても従来の装甲材を上回ります。既存の艦艇に使用しても十分に有用なはずです」
「理解しておりますよ。私も一応軍人の端くれですからね」
「であれば、価値に対する正当な報酬があってしかるべきではないですか?」
筋道は通しているし、要求は正当だろうと言わんばかりに両手を広げるが、いか
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