第107話 まっとうな軍人
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ない。そこまで考えれば、これは『国内』問題ではない。つまりは乗っ取り以外の別の目的もありうる。
「……まず政治案件でないことを確認する必要があるんじゃないか?」
「勿論。まぁ仮に政治案件でも、何とかしなければならない話さ」
もし政治案件だとしても二〇〇億ディナールというのはあまりに大きすぎる額だ。大侵攻の当初予算が二〇〇〇億ディナール、国防予算が一兆九七〇〇億ディナール。その何パーセントかは分からないが、政治家のポケットに入れるにはあまりに額が大きすぎる。
仮に仲介手数料が一パーセントだとしてもバレれば、トリューニヒトであってもただでは済まない。ましてや民間企業ではなく国防企業だ。より直接的に安全保障の問題になる。そこまで危ない橋を、現時点のトリューニヒトが渡るとは思えない……いや、一応確認すべきだろう。国外問題であれば、それなりの目溢し料を手にしている可能性もある。
「随分君も強気だな。トリューニヒト氏と蜜月関係という噂はやはり本当か」
「言い触らしている奴をこの部屋に引き摺って来てくれたら恩に着るよ」
右手を開いたり閉じたりして笑顔を見せると、モンテイユ氏は引き攣り笑いを浮かべる。今のところ憂国騎士団の一件は公表もされてなければ、噂話にもなってない。一人の『肉体青年労働者』に一個小隊が無力化されたなどと知られれば、体のいい恥さらしだ。死んでも喋らないだろうし、関わった治安警察のへぼ隊長や病院関係者に『箝口令』をしくだろう。おかげで今も温厚で話の分かる青年政治将校という評判に変わりはない。
「で、穏便な解決策ですけれど、どうです? 何かいい案はありませんか?」
自分で淹れた不味いジャスミンティーをおかわりしつつ俺が問うと、モンテイユ氏は深くソファに腰を沈めて腕を組んて応える。
「まずその資材会社の資産実態調査を行う。あまりにも高額な取引額の提示だ。一から生産設備を構築すると言ってもその三分の一でもお釣りがくるのに、得た資金を何に使うのか資材会社の目的を知るべきだろう」
ブラフにしても高額だ。造船大手が資材会社をダミーにして、高速巡航艦の開発データを奪い取りに来た、という微妙な可能性も無いわけではない。資材会社の株の所有者を当たれば、そのあたりの背景が確認できる。身の程知らずの政治業者がいれば、そこで淘汰もできる。
「大幅に減額できれば、後は増資だ。中小とはいえ将来有望な造船会社であることを公表し、資金を市場から集める。くれぐれも高速巡航艦の『制式採用』という言葉は使うなよ」
「やはりここは正面突破しかないか」
「そのくらい君でも理解できるだろう。もしかして中央政府からの増資とかも考えたのか?」
眉をしかめるモンテイユ氏に、俺は二度ばかり頷いた。
「資材会社へは財務委員会から抜き打ち社
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