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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第107話 まっとうな軍人
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庫による低防御部の減少・直線部品多用による製造効率化及び補修能率の向上、内部構造効率化による艦艇運用員の低減……戦闘能力・生産性・生存性、どれを取っても既存の巡航艦をはるかに上回る。

 だが同じデザインでも既存の装甲材を使用すればその優位性は格段に落ちる。一回り大きくなった船体は被弾面積を大きくするだけでなく、旋回性能も低下することになる。近接格闘戦に持ち込まれれば、特殊素材の装甲材がない限り、小回りの利く既存の巡航艦の方がかなり優位だ。

「……確実に長く売れる製品の基幹となる技術なのだから言い値で買え、というわけか」
「既製品の生産ラインをそのまま新製品に転換できるとしたら、資材の販売も含めれば、だいたい五〇年で元が取れる」
「つまり一世代ギリギリの数字か。その資材会社の営業部長は只者じゃない」
「しかし大手ですら一度に支払える額でもない」
「買収か子会社化を企んでるだろう。提供素材を利用しなければ(制式採用の)保証がない。保証がない限り支払える額ではない。乗り掛かった舟を途中で降りれない企業に逃げ道はない」

 スッパリと言い切るモンテイユ氏の回答に、俺は自分の考えが間違っていないことに安堵した。同時にその資材会社の背後が誰だか、おぼろげに見えてくる。同盟軍とのパイプの太い大手ではなく、あえて艦船開発能力に確かな技術力を持つ中小企業に話を持ち込んだ。

 もし大手造船会社に対して同じように話を持ち込めば、敏腕顧問弁護士と百戦錬磨の調達部がお出迎えして、逆に傘下に収められてしまうこともあるだろうし、交渉次第によってはそれなりの額を提示されて終わりだ。だが大金だけではなく、軍と開発取引ができる企業という顔も欲しているのであれば話は変わってくる。

 よくある話だと言われればそうかもしれない。軍ではなく民間であれば日常茶飯事だろう。銀行や投資会社が旗を振って業界の再編を促すことは、前世でもよくあった話だ。ただ今回は国防に直接関わる分野だ。政治家や官僚が介入してたとしてもおかしくない……それ故にこの話をバウンスゴール大佐は装備開発部隷下の艦船開発プロジェクト部の部員を連れて、俺に持ってきたのだろう。

「君としてはこの買収なり子会社化なりは阻止したい。そう考えているのか?」
「可能ならば。ここで開発がストップすることは、今後死ななくても良かった将兵が死ぬことになる、かもしれない」

 生存性の向上した新型高速巡航艦の登場は早ければ早いほどいい。企業買収などによって開発部門が別会社に吸収されるようなことになれば、下手をすれば吸収側の企業審査から始めることになる。相手が同業大手であればそういう手間はないだろうが、今回仕掛けてきているのは資材会社だ。庇を貸して母屋を乗っ取るつもりと考えれば、その遣り口は真っ当な資材会社とは到底
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