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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第107話 まっとうな軍人
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仕入れ』たんです?」
「……それは」
 問屋に仕入れ値を聞くのは本来ルール違反だろうが、マトモな問屋でないのだから構わないだろう。
「流石に上級大将とか大将クラスの人間ではないでしょう。そうですね、技術中将でしょうか。であれば多く見積もって一〇〇〇万帝国マルクくらいですか?」

 フェザーンに居た時、帝国人の商人がその位の額を言ってドミニクを口説いていたことを思い出す。たしかドミニクを田舎の別邸に囲って愛人にしようとしていた中年のオッサンだ。あれから物価の変動はそれほどないだろうから、まず間違いはない。だがグラズノフの顔は奇妙に歪んだ後で、吐き捨てるように言う。

「一億帝国マルクだ」
 今度は俺の顔が引き攣る。想定の一〇倍。別邸どころか広大な敷地付きの豪邸が買える。
「……駐在武官に頼んで密告してもらってもいいんですよ?」
「一億帝国マルクだ」

 仕入れ値を吊り上げる為に嘘を言っているなら潰すぞと言っても、グラズノフは言い張る。情報漏洩者が確実にあのハゲ工学博士とは言えないが、技術(指向性ゼッフル粒子は充分戦略を変える兵器だが)よりも政治力で伸し上がったと考えれば、本人の欲望以上に地位の維持には金が掛かっているのかもしれない。

「……さらに地位が上がったらそれどころでは済まなくなりますよ。それでいいんですか?」
「余計なお世話だ」

 心底嫌そうな顔をしていうグラズノフに、俺は小さく頭を下げで苦笑を誤魔化すと、残されたシャンパンのボトルからグラズノフと俺の両方のグラスに残りを注ぐ。その動きをグラズノフは席を立たずに見ていたので、俺は自分のグラスを手に取って掲げて言った。

「請求額を二億ディナールに修正してください」
「それでは採算が取れない。社の研究施設も……」
 ほぼ諦めていても抵抗しようとする声に、俺は左手をかざしてグラズノフを制する。
「投資ファンドを組みます。その資金を使って新装甲材製造プラントを新会社としてプレヴノン・MM社から独立させてください。SRSBが筆頭になって出資しますが、それ以外に三〇億ディナール、こちらで用意します」
「は?」
「それだけあれば試験用製造プラントどころか量産製造プラントも建築できるでしょう。そこからプレヴノン・MM社には、販売量に応じた特許料をお支払いします。もちろん期限付きで法的に認められる程度ではありますが」

 プレヴノン・MM社がSRSBを傘下に収めて、同盟の軍艦技術を帝国に売り渡そうという考えが最初にあっただろうが、それを認めるつもりは毛頭ない。故に新会社設立と、その新会社がSRSBの協力会社になることは譲らない。
 プレヴノン・MM社に渡ったペナント料は、グラズノフを通じてフェザーンに向かうだろう。販売量に応じた常識的な特許料である以上、生産・納
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