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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第107話 まっとうな軍人
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がら飲みながらポツリとつぶやくと、モンテイユ氏は小さく笑みを浮かべつつ鼻を鳴らしながら、顔の中にいるカモメの右翼を大きく吊り上げて応える。

「それで途端にアポが取りにくくなったと噂の君が、係長になったばかりの私を呼び寄せたってわけだな? 君は私に何をして欲しいんだ?」
「知恵を貸してほしい。上手く丸められたら未確定だが秘匿情報を出す」
「非合法な話だったら乗らないぞ」
「資金不足に喘ぐとある中小企業がある」

 それが現在、国防技術本部隷下艦船開発部と共同で高速巡航艦を開発中である造船会社であることは、モンテイユ氏もすぐに理解してくれる。

「現在開発中の『製品』を製造するに際して、資金が足りずどうしても必要な資材が手に入らない。提供する資材会社側としては素材技術を提供して欲しいのであれば、相応の額を支払ってもらいたいという」
「その資材会社の請求額が幾らか聞いてもいいか?」
「二〇〇億ディナール」
「その『製品』の開発費は?」
「一〇億ディナール」
「もうそれは財務委員会の出番ではないな。治安警察の領分だろう」
「ところがそうでもない」

 その資材会社が造船会社に独占販売を提案してきた宇宙戦闘艦用の装甲材は、まさに画期的なものだった。独自の方向性結晶構造を持つ特殊合金であるらしく、従来の装甲材より比重はあるが、装甲厚比対エネルギー防御力にも物理的防御力にも優れている。どうやら延性は従来品よりもさらに乏しいので、艦船の装甲として使用するのであれば、直線・平面の多い艦船になる。
 そしてその中小企業(造船会社)は、新装甲材に相応しい見事な艦船デザインを作り上げた。艦首より船体中央部まで、今までの同盟軍艦船においては巨大輸送艦でしか採用されていない四角錘のような傾斜を持っている。中央部はその陰に隠れるように引き締まり、そこから艦尾にかけて艦首から続く傾斜線の内側に入るよう整えられた推進部を有する。
 真横から見ると槍の穂先のような、同盟軍にそれまでなかった優美さすら備える絶世の美女の艶姿(イメージ映像)を、大型の立体映像端末でモンテイユ氏に披露すると、氏はまるで初めてヌードを目にした思春期初頭の少年のような感じで舐め廻すように凝視する。三分近く経って、ようやくモンテイユ氏は顔を上げて俺に視線を送って言った。

「君の目から見て、この製品は使えると思うか?」
「量産性が確保されることが最低条件だが、想定されるカタログデータの八割でも達成できれば、既存の競合他社製品(帝国軍標準型巡航艦)に後れを取ることはない」

 傾斜化による船体の長大化を逆手に取った戦艦並の長射程主砲の搭載、特殊素材傾斜装甲自体の防御力・船腹増大により可能となった既存核融合炉タンデム搭載による防御シールドの強化と速力の向上・完全閉鎖式艦載機格納
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