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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第107話 まっとうな軍人
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 宇宙暦七九一年 四月 ハイネセンポリス

 案の定というか、予想通りだったが、チェン秘書官の抜けた穴は大きかった。

 この仕事に就いてだいたい八ケ月。おおよそ仕事の流れは分かっていた。しかし手配する場所や品物についての手続きはチェン秘書官に任せっぱなしだった為、そっち方面の業務については些か手間取ってしまった。チェン秘書官が既に手配していた分を優先し、新規のアポイントを半分以下に減らしてこなしていくしか方法はない。

 もちろん補充の秘書官に頼むという考えもあったが、俺の独断でフェザーンに派遣してしまった以上、代行要員の手配優先度は低くなるのは道理。それにこういった任務を知る人間は少ない方が良いから敢えて代行要員は頼まず、チェン秘書官の残していった業務端末に悪戦苦闘しつつ、自らジャスミンティーを淹れて来客を迎える羽目になっていた。

「いや、なんだ。これ。自白剤とか、睡眠薬とか入ってないよな」
 早朝掃除したばかりのソファに深く腰を落とし、やはり残していったクッキーを口に放り込みながら、『マトモな方の』カモメ眉は俺に言う。
「そんなに不味いですか? モンテイユさん」

 そう応えつつ、俺も自分の淹れたジャスミンティーを口に運んで、氏の言う通り薬品のような苦みが、口の中全体に広がって眉をしかめざるを得なかった。

「あ〜確かにこれは少し沸かし過ぎたかもしれない」
「迂闊に人を雇えないというのは分かるが、せめてこういうところは誰かに任せた方が良いんじゃないか?」
「二ケ月の短期じゃ、そうやすやすと口の堅い人は来てくれないんですよ」
「万事用意周到な君が代行者の手配ができなかったってことは、あの美人秘書官殿のご家族の事態は余程切迫していたんだな。間に合うといいが」
「そうですね……」

 一応対外的には、ハイネセンより三八〇〇光年離れたパラトループ星域にあるプルシャ=スークタ星系に住んでいるチェン秘書官の母親が突発性劇症膠原病に罹患し、どんなに長く持っても一ヶ月ということで、急ぎで一時休暇を取ったということになっている。

 所謂主要航路から外れているパラトループ星域へ行くには、ランテマリオ星域から辺境星域を巡回してフェザーンに入る定期民間貨客船に乗るか、定期便で一気にフェザーンまで行ってからパラトループ星域への直行便に乗るかの二択だ。そして国家の統合状態としては大変残念なことに、前者よりもはるかに後者の方が、係る日数は少なく便数も多い。故にチェン秘書官がフェザーンに向かうのは、『当然』の選択だ。

「まぁ一応彼女も軍属ですから、ポレヴィト行きの軍定期便に最優先で乗ってもらいましたよ……できれば開発中の高速巡航艦があれば、彼女はもっと安心できたんでしょうけどね」

 自分の淹れたジャスミンティーを我慢しながら
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