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邪教、引き継ぎます
第五章
43.時間との戦い
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「あ、すみません。ハゼリオ様。今少し大丈夫でしょうか」
「フォルか。どうした」
「二階のシルバーデビルさんがお時間をいただきたいとのことです」
「ふむ。今は忙しくないのでかまわぬが……」
「?」
「お前経由での相談、陳情、書類の提出が流行ってきているな。ずいぶん多くなった印象だ」
「そう言われば、言伝(ことづて)を頼まれることが増えた気がします。私の仕事はお茶くみやお掃除ですので、あまりよろしくないのでしょうか?」
「まあ、普通はよろしくない。大げさな言い方だが、下々の者たちの生殺与奪を、決裁権者でない者が握ってしまうことにもなる。個人的に好かぬ者を(おとしい)れたり排除したりすることも、工夫次第では可能だ」
「なるほど……そうですよね」
「普通は、な」
「?」

「お前がそのような愚行を犯す姿が、(わし)には想像できぬ。たとえお前が歳を重ねたとしてもだ。お前には嫌いな者がいないのではないか?」
「もちろん! 皆さんのことは大好きです。いつもよくしてくださいますし」
「相手に好かれるために最も大切なことは、相手を好きになることだという。お前が相手を心から好きだから、相手からも親しまれ、気軽に声をかけられる存在として認知されたのだろう」
「そうなのでしょうか?」
「おそらくな。つまりこの現状については、お前が単に若いからということを差し引いても必然。儂は残念ながら気軽に声をかけられる相手とは思われていない。お前が他の者たちの心の負担を減らしているなら、このまま流れに任せることにしよう」
「えっ。ハゼリオ様はお優しいですし、とっても話しかけやすいですよ!?」
「お前のように思っている者が少ないから、今こうなっている」
「それは嫌です。ハゼリオ様はお優しくて全然怖くないと私が皆さんに触れ回ります!」
「そういうことはせんでよい……」



 − − −



 ロンダルキアの神殿の最奥にある、大きな礼拝堂。
 小さな高窓たちから朝陽が差し込む中、魔術師のローブを着た黒髪の少年が、巨大な三又の槍のようにも見える石像の前で祈りを捧げていた。
 その手には、悪魔神官の遺したいかずちの杖。現教団代表者・フォルである。

「おはよう……というか、ちゃんと寝てるのかな」

 すでに足音は聞こえており、声にも馴染みがあったことから、フォルは慌てることもなくスッと振り返った。
 やってきたのは、首に大きなマフラーを巻いた白く小さな少女だった。ロンダルキアの(ほこら)の主・ミグアである。

「おはようございます」
「祈りの邪魔だった?」
「いえいえ! まったく!」

 今度は慌てて、手振りで問題がないことを示した。
 少女が隣まで来て、像を見上げる。
 フォルはその横顔に向けて話した
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