第五章
43.時間との戦い
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。
「ここで祈っていると、つい思い出してしまうことがあります。前の神殿での日々を」
「そう」
「本当は、雑念は頭から振り払わなければいけないのでしょうけど」
「前の神殿での日々、か……」
「ええ。とても、とても、楽しい日々でした」
「言う相手がいないなら、今度祠に来たときにゆっくり聞いてあげてもいい」
「ありがとうございます」
「で、いけそうなの。破壊神召還の儀」
「はい。研究資料によりますと、破壊神はシドー様以外にも存在するそうです。術式もわかりましたし、必要な道具もすべて揃ったと思います」
「よかったね」
「ミグアさんが手伝ってくださったおかげです。皆さんのために必ず召還を成功させます」
「……」
「えっ、どうされました?」
ジトっとした目で瞳をのぞき込むように見つめられ、フォルは上体をのけぞらせた。
「それ、生贄が必要なんじゃないの」
「いえ、大丈夫ですよ。ハーゴン様がおこなわれた方法は本来のやり方ではありませんでしたので」
「そっか。ならいい。もし生贄が必要なら、キミのことだから変な気を起こすんじゃないかと気になってた」
かつて大神官ハーゴンは、自身の体を生贄にすることで破壊神シドーを召喚した。この白い少女は、フォルが同じことを考えているのではないかと疑っていたのである。
お気遣いありがとうございます――と、フォルは頭を掻いた。
彼女に心配をされていたことは、もちろん気づいていなかった。
「なんだかすっかり巻き込むかたちになってしまって、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「前も言ったけど、それはもう気にしなくていい」
白い少女はふたたびフォルの顔をのぞき込んだ。今度は瞳だけでなく、顔全体をジロジロ見るように。
「それより。キミ、ちゃんと寝たほうがいい。朝は祈り、昼は仕事、夜は調べ物。これじゃまた倒れる」
「そ、そうですかね。すみません」
「魚だって寝てる。寝ないですむ生き物なんてない」
「あ、はい。なるべく寝るようにします。ごめんなさい」
これから祠に帰るという白い少女を、フォルは神殿の入り口まで見送った。
◇
「おーし! 動いた! これできみも教団の一員だ!」
「すごいのを生き返らせたな……。浮いてるぞ」
「うん。キラーマシンの改良型みたいなやつだね。数段強いはずだよ」
粉雪を黒い短髪に積もらせながら喜ぶ、自称キラーマシン使い・タクト。そして、その後ろで驚く、真紅の髪にやはり粉雪を積もらせているバーサーカーの少女・シェーラ。
それは、タクトがロンダルキアの雪の中から先ほど掘り当てたものだった。
キラーマシンと同じくらいの大きさの、青い金属の体。一つ眼は赤く光り、右手には棘のつ
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