第百四十二話 運動会の後はその五
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「女子寮なんてね」
「女の園か」
「女の巣よ」
園ではなくというのだ。
「お花が咲き誇ってるんじゃなくて」
「生きものが一杯いる」
「そうした場所でね」
そうであってというのだ。
「いい場所じゃないわよ」
「そうよね」
「その匂いもね」
「凄いのよね」
「それこそ男子が入ったら」
そうすればというのだ。
「視覚的にもきついし」
「奇麗な場所じゃないのね」
「散らかってるわよ、女の子の会話も行動も酷いし」
「会話は耳ね」
「耳にもくるわよ」
聴覚からも悪影響を受けるというのだ。
「そうなるしね」
「匂いもでね、最悪気絶するわよ」
「女子寮に入ったら」
「秘密の花園は創作の世界だけのことよ」
バーネットの小説のタイトルを冗談で出した、小公子や小公女を書いたことでも知られているアメリカの女流作家である。
「あくまでね」
「そうよね」
「現実はね」
それはというと。
「本当にね」
「残酷よね」
「そうよ、更衣室もおトイレもお風呂場もで」
「寮もね」
「そこに夢はないわよ」
インドネシアの娘は言い切った、そうした話をしながらだった。
一華は自分のクラスに入った、すると富美子からこう言われた。
「あんた朝シャワー浴びた?」
「浴びてないわよ」
一華はすぐに答えた。
「今さっきまで朝練出てたし」
「そうよね」
「石鹸の匂いでもする?」
「しないわよ」
別にというのだった。
「何も匂わないわ」
「だったらいいわね」
「いや、朝登校する前によ」
富美子はその時にと話した。
「シャワー浴びる方がいいってね」
「美奈代さんに言われたの」
「女の子はね」
「そうなの」
「そう言うお姉ちゃんも入るのは夏以外は夜だけだけれどね」
「けれど夏は浴びるから」
「朝もね、何でも女の子の体臭はきついから」
それでというのだ。
「気を付けろって言われて」
「それさっき私部活の後で話してたから」
一華はそれでと応えた。
「女の子の体臭のことをね」
「そうだったの」
「臭いわよね」
一華は真顔で言い切った。
「はっきり言って」
「男子よりもね」
「汗の匂いなんてね」
男子のというのだ。
「甘い甘いよ」
「それこそね」
「脇が匂う娘だっているし」
所謂ワキガである、これは男だけのことではないのだ。
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