激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
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帝国暦487年3月20日14:00
ヴァルハラ星系、オーディン、新無憂宮北苑、国務尚書執務室、
クラウス・フォン・リヒテンラーデ
普段顔も見せぬのに、こういう時だけ顔を並べて現れよる。ほとほと外戚というのは困ったものよ…。
「何度も申し上げるが、叛徒共との交渉など許されるものではありませんぞ、侯」
「帝国の権威に傷がつくとは思われぬのか。叛乱軍とは申せ、所詮流刑者達の眷属ではないか。断固として反対である」
「ブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯…お二人共冷静になられよ。叛徒共に囚われておる者達の中には、近しくはなくとも卿等の縁者もおるやも知れぬ。陛下とてその辺りの事を気にしておられるのだ」
陛下は何故この二人にご息女を嫁がせたのか。恩を売ったつもりでも、益々つけあがる結果となっておるではないか…。いや、あの時は確かにこうせねば宮中はまとまらなかった。それが分かっていたからこそ我々もそう進言したのではなかったか…。
「それに、囚われておる者達の大多数は平民だ。平民達の忠をくすぐる為にも為さねば成らぬ事なのだ」
「平民どもの忠をな…なればこそ叛徒共の奸計に乗る訳にはいかぬ。そうは思われぬのか」
「言葉を慎まれよブラウンシュヴァイク公。既に陛下の勅裁は下されておるのだぞ。それを奸計に乗るなどと…たとえ陛下のご女婿である公とはいえ、申してよい事とならぬ事があるぞ」
私の言葉にブラウンシュヴァイクは呆れた顔をし、リッテンハイムは薄く笑った。
「…奸計ではないか。我等が知らぬと思うてか。辺境で起きている事態を」
「辺境で何が起きていると申されるのか」
「韜晦も程々になされるがよい、リヒテンラーデ侯。辺境の領主共に叛徒共が物資援助を行っているというではないか」
「その様な報告は受けておらぬが」
「フン、貧乏領主共が報告なぞするものか。叛徒共のやり様は、虜囚を返す代わりに辺境には目を潰れと申しておるようなものだ。このまま我等が手をこまねいておれば辺境は叛徒共に屈したも同然となるであろう。侯、どう思われる。帝国の危機ぞ」
帝国の危機だと?…お前達は今まで見て見ぬふりをしていたではないか…。
「辺境については軍が調査をしておる、詳細はいずれ判明する」
私がそう言うと、リッテンハイムがせせら笑った。芝居かかったら動作で言葉を続ける。
「軍か。そもそも軍がしっかりしておれば、この様な事態にはならなかったのだ。ましてや今、辺境守備に就いておるのはミューゼルではないか。公の前で申すのはいささか心苦しいが、彼奴ではいささか重きに欠けよう。年も若いし実績もない。叛徒共に侮られておる故に、好き勝手されてしまうのではないか」
「いや、リッテンハイム侯、私の事などお気になさらずともよい。事実は事実だ。ミューゼルはヒルデス
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