激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の人生が喜劇ではなかった事の証となるだろう…。
「ですが、意外ですね」
「意外?」
「はい。皇帝の意向とはいえ、ラインハルト様の目的は現在の体制では許されるものではありません。ミュッケンベルガー元帥はラインハルト様をお叱りにはならなかった」
確かにそうだ。俺の望みは帝国では決して許されるものではない。皇帝の意向が働いているとはいえ閑職に回されてもおかしくはないのだ。ミュッケンベルガーも奴なりに帝国の現状を憂いているという事か…。
「ミュッケンベルガーは生粋の軍人だ。もしかしたら皇帝ではなく、帝国そのものに忠誠を誓っているのかも知れないな」
「帝国そのものにですか」
「ああ。皇帝は変わるが、帝国は失くならない。皇帝を護るのではなく、帝国を護ると考えているとすれば奴との会話の内容にも説明がつく」
「なるほど、その通りだと思います…ですが大丈夫でしょうか、ミュッケンベルガー元帥はフェザーンに向かいます。フェザーンにとって、貴族達の支援以上に帝国に混乱をもたらすチャンスだと思うのですが」
「俺が艦隊を率いて護衛すると申し出たのだが断られた。だが考えてみると捕虜交換式そのものを潰す様な大規模な工作はフェザーンとてしない筈だ。もしミュッケンベルガーが狙われるとすれば奴の身辺に近付いての暗殺だろう」
「身辺警護には留意しておられるとは思いますが、普段以上に警護を強化致しませんと…」
誰か居ないか…しがらみが少なく、貴族の紐付きではない機転の利きそうな者が…俺が何を考えているか想像がついたのだろう、キルヒアイスが再び切り出した。
「一人心当たりがあります、適任の者が。彼なら叛乱軍も注視するでしょうから、フェザーンが刺客を送り込もうとしても難しいかもしれません」
「叛乱軍も注視する?まずいのではないか?」
「帝国軍、叛乱軍の両方から衆目を集めるとなれば手出しはしにくいでしょう。おそらく大丈夫かと。それにもし叛乱軍に帝国軍に対する害意があったとしても、その者の存在がそれをかき消してくれるでしょう」
「そんな都合のいい者が存在するのか?」
「はい、ラインハルト様もご存知ですよ。カストロプ領討伐の際、アルテミスの首飾り…戦闘衛星に直接降下した…」
「…ああ、リューネブルクか。確かに奴なら機転も利くだろうし戦闘技術も一流だ。それに叛乱軍についても詳しい…うってつけだな。それに未だ飼い殺しの様な存在だから、喜んで引き受けるだろう。護衛任務を引き受けてくれるかどうか、連絡をとってくれないか」
「了解致しました」
キルヒアイスが執務室を出て行く。それにしても急に事態が動き出した…立ち位置を見つけなくてはならない。簒奪の意志が露見している以上、今後はあの男に遠慮する事はないだろう……有志連合、敵か味方か判らぬ存在だ、姉上の事もある、何としてもミュッケンベ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ