激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
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いる。血統からいってそれに異を唱える事は出来ない。となるとしばらくの間はそれを認め雌伏せねばならない、であればまずは現在の状況を利用して両家の勢力を伸ばすべきであろう。そしてエルウィン・ヨーゼフの治世に失政が生まれるのを待つ。リヒテンラーデ侯も老い先長くはない…と。
「フェザーンが両家の後ろ楯になっているというのか。何なのだ、奴等の目的は」
ミッターマイヤーが忌々しそうに呟いた。要所要所で顔を出すフェザーン…確かに忌々しい事この上ない。
「帝国を経済面から支配しようとしているのでしょう。今フェルナー少佐が述べた事から推察すると、フェザーンは次期皇帝をエルウィン・ヨーゼフ殿下と考えている。リヒテンラーデ侯も健在ですし、軍もミュッケンベルガー元帥がいらっしゃいます。たとえ皇帝陛下がお倒れになられても、ブラウンシュヴァイク、リッテンハイム両陣営が望む様な事態にはならない。だが両陣営が手を組んで一つになれば、その威勢は政府とてこれまで以上に無視は出来なくなる。そこにフェザーンが食い込むとなれば尚更です」
「馬鹿な、帝国を二つに割る様なものではないか。フェザーンはそれに手を貸すというのか」
キルヒアイスの言にミッターマイヤーは怒気を隠す事なく憤慨していた。キルヒアイスの見方は正しい。フェザーンは帝国を経済面から絡めとろうとしている。だがどれだけフェザーンを追及しても奴等はシラを切るだろう。元々大貴族達とフェザーンの付き合いは濃い。シラを切るどころか堂々と大貴族を支援するかもしれない。そして帝国政府はそれを阻止し得ないだろう…。
「キルヒアイス、ミッターマイヤー、明後日オーディンを発つ。シャンタウにて先発しているロイエンタール達と合流する」
「了解致しました」
キルヒアイスとミッターマイヤーが頷き合い、ミッターマイヤーが執務室を出ていく。
「フェルナー」
「はい」
「卿に忠告してくれた親切な御仁を通じて、貴族達の動静を探れ。一日と少ししか時間はないが、卿には充分な時間の筈だ」
「かしこまりました」
フェルナーが執務室を出ていくと、キルヒアイスが口を開いた。
「…アンネローゼ様は大丈夫でしょうか」
「心配ない。ミュッケンベルガーが何とかしてくれるそうだ」
キルヒアイスは一瞬意外そうな顔をしたが、ミュッケンベルガーとの会話の内容を伝えると、キルヒアイスは深く頷いた。
「ラインハルト様はそれで宜しいのですか?」
「ばれていた物は仕方がない、滑稽ではあるがな。どうやら俺はあの男を見誤っていた様だ。だが見誤っていたとしてもあの男を許そうとは思わない」
一番気に食わないのは、あの男の思惑通りに俺が歩んで来た、という事だ。簒奪は結構、だが帝国は護れ…ふん、帝国を護る事など誰がやるものか。護るのではなく、新しい帝国を創るのだ。それこそが俺
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