激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
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う。戦争をしながら要塞建設と艦隊再建もこなさねばならないのだ。難事である。物や物資は再生産できるが、人は簡単には再生産出来ない。貴族が軍から去った以上、損失を埋める為の人的資源は平民に頼るしかなかった…貴族が藩屏あの男が皇帝として即位したのは四百五十三年。即位前から帝国の凋落を感じていたのかもしれない。そして即位して現在に至るまで、それを現実の物として見続けてきた。俺が奴ならどうしただろうか。奴の様な状況では、望んだとて変える事の出来ない事の方が多いだろう。
俺の執務室ではキルヒアイスとフェルナー、そしてミッターマイヤーが待っていた。ケスラーはフォルゲンに居るし、ロイエンタールとメックリンガーは既にシャンタウに向けて進発している。
「司令長官の要件はやはり捕虜交換の件ですか」
「そうだ。捕虜交換は政府ではなく軍が行う事になった。場所はおそらくフェザーンだ。ヒルデスハイム幕僚副総監、ミュッケンベルガー司令長官がフェザーンに赴いて実行の運びとなる」
問うて来たのはキルヒアイスだった。その問いに答えながらフェルナーに目をやると、察したのだろう、フェルナーの方から俺の知りたい事を話しだした。
「有志連合の件、でございますか」
有志連合、聞き慣れないであろう単語にキルヒアイス、ミッターマイヤーが訝しげな顔をするが、聞いていくうちに分かると思ったのか、二人とも口を挟む事はしなかった。
「そうだ。卿の旧主が絡んでいる。何か聞いているか」
「閣下にお仕えする様になってからはブラウンシュヴァイク家への出入りはしておりません。ですが、忠告してくれた方が居りました」
「ほう。その親切な人物は何と言っていたのだ」
フェルナーは、これから話す事は他言無用とばかりにキルヒアイスとミッターマイヤーに視線を移し、再び俺に視線を戻すと、話し始めた。
「有志連合…ブラウンシュヴァイク公とリッテンハイム侯に知恵をつけたのはフェザーンだという事でした」
フェルナーは続けた。皇帝がバラ園で倒れた、誤って転倒し頭部を打ち意識不明になった。箝口令は敷かれていたものの、ブラウンシュヴァイク公、リッテンハイム侯は皇帝の婿である、両家には伝えられていた。皇帝の意識は数日中に戻したからよかったものの、両者は震えあがったという。理由は皇帝が後継者を決めていないからだった。両家とも外戚であり、自分の娘に一門から見所のある貴族を婿に迎えて補佐させ、女帝とすればよい…そう考えていたものの、それはそう望んでいる、というだけの話であって、実際にそういう事態が迫っているとなると話は別…要するに何の準備もしていなかった事に今更ながら気づいた為だった。それに後継者は決まっていなくとも現実には皇太孫としてエルウィン・ヨーゼフがあり、この幼児を次の皇帝としてリヒテンラーデ侯あたりが担ぎ出すのは目に見えて
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