激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
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いる訳ではないだろう、だが帝国中央にいる貴族にはそれが分からない。現象面しか見えておらんのだ」
「だから有志連合軍を出すと」
「そうだ。軍を援ける為だという事だ」
ミュッケンベルガーは貴族達の思惑をどう考えているのだろう?
「…もしや、とは思いますが…貴族の方々はこれを機会に辺境に勢力を伸ばそうとしているのではないでしょうか」
「まさしくそうだろうな。だが反対は出来ない、一応筋は通っているし、断る理由もない。ただ面子は丸潰れだがな」
ミュッケンベルガーはそう言って笑った。
「しかし、叛乱軍と会敵する事も考えられます、それについて、有志連合とやらはどう考えているのでしょう?」
自分で言って気付いた。叛乱軍は軍に、俺に任せるつもりなのだろう…我等が控えている、軍は憂いなく存分に戦うとよい…。俺がそれに気付いた事を察したのだろう、ミュッケンベルガーは重く口を開いた。
「卿は苦しい立場に置かれるな。卿の姉君はブラウンシュヴァイク公の手の内にある。言わば子飼いの立場故、公が戦えと命じたら卿は戦わなくてはならん。軍の方針と違ってもだ」
ミュッケンベルガーは窓の外に目をやった。見たい風景がある訳でもないだろうに…。
軍の方針と相反する命令がブラウンシュヴァイク公から出された時、俺はどうするのだろう。まさしく、先日ヒルデスハイム伯に指摘された事なのだ…。
「…捕虜の移動準備は整っているのだったな?」
「はい。捕虜交換の場所は帝国領内ですか?」
「いや、フェザーンだ。あそこなら叛乱軍も無茶は出来ん」
「私が護衛致しましょうか」
「何を言っているのだ、卿が居なくては辺境の防衛を司る者が居ないではないか。心遣いは嬉しい、だが今は任務に精励するのだ」
「はっ…」
「卿はオーディンを離れた方がいい。麾下の艦隊を連れてシャンタウに移動するのだ……姉君の事は私が何とかしよう」
「閣下がですか?…失礼しました、ありがたいお話ですが、閣下にご迷惑がかかります。そこまでお手を煩わせる訳にはまいりません」
「何を言う。私としては目をかけている部下が憂いなく働けない現状こそが憎らしい。任せておけ」
一瞬だが、ミュッケンベルガーの目が優しい光を帯びた様な気がした。高く評価されているとは思う、でなければ副司令長官への抜擢など有り得ない。だが姉上の事まで気にかけてくれるとなると、ミュッケンベルガーの目的は何なのだろう?
「…閣下、何故そこまで気にかけていただけるのですか」
「そうだな…最初は気に食わない存在だった。姉の七光りで幼年学校を卒業、能力はあるかもしれないが、周囲が腫れ物に触る様な態度を取るのをいい事に気儘に振る舞う青二才…金髪の孺子とはよく言ったものだと思ったよ」
ミュッケンベルガーは立ち上がると自らコーヒーを注ぎ出した。俺の分まで注ごうと
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