激闘編
第九十六話 旅立ちのとき
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示していた。帝国の為に戦って囚われた者達なのだから、政府が前面に出て彼等を労って欲しい、でなければ報われまいと言うのだ。それが正しい物の見方だと言う事は分かっている、だがそれをやれば…。
「我等の用事は済んだ。では侯、これからもよしなに」
「お二方共…わざわざのご足労、ご迷惑をおかけした」
「造作もない。帝国の国難の刻だ、藩屏として協力するのは当然の事よ」
ブラウンシュヴァイク、リッテンハイムの二人が執務室を出ていく…今更だが、この帝国という国はなんと統治しにくい国なのだ、いや、なってしまったというべきか……開祖ルドルフ大帝が現状をご覧になられたらどうお思いになるのだろう。
二人が出て行ったのを察したのだろう、隣室からワイツが入って来た。
「…軍務尚書殿をお呼びなさいますか」
「うむ、そうしてくれるか」
3月25日16:00
ミュッケンベルガー元帥府、宇宙艦隊司令長官執務室、
ラインハルト・フォン・ミューゼル
「では、軍主導で捕虜交換を行う事になったのですね」
「うむ。捕虜交換式には儂が出向く事となった。まあ儂だけではないがな」
「閣下がですか?軍主導という事であれば軍務尚書か軍務次官が出向くのではないのですか」
「リヒテンラーデ侯は政府の色を出したくないらしい。正使は幕僚副総監、副使が儂だ」
「軍の現場のやり取りにせよ、という事ですか」
「そういう事だ。だがそんな事よりもう一つ難題が持ち上がった。辺境に、貴族が有志連合軍を出す」
貴族の有志連合軍?なんだそれは。
「有志連合軍、ですか」
「うむ。大貴族のお歴々自ら軍を率いて、辺境領主達の引き締めにかかるそうだ。叛乱軍が捕虜交換を持ちかけて来たのは、辺境に対する謀略の目眩ましと貴族達は判断したらしい」
奴等は馬鹿なのか?叛乱軍との捕虜交換自体は対等のやり取りなのだ、辺境に対する謀略の目眩ましにはなり得ない。そんな事も分からないのか……いや、そうか、奴等はこれを勢力伸長の機会と捉えているのか…。
「どうやら、叛乱軍による辺境への物資援助の話がオーディン周辺の貴族達にも伝わったらしい。軍が対処出来ないのなら、我等がやると。叛乱軍へ協力する辺境領主達への脅迫だな」
「しかし…そんな事態になれば、辺境領主達は雪崩をうって叛乱軍に与するのではありませんか」
「…辺境は貧しい。何十年も叛乱軍と戦って来た私が言えた事ではないが、彼等が貧しいのは戦争が原因だ。戦争のせいで政府には辺境を省みる余力がない。その上同じ藩屏である筈の帝国中枢部の貴族達も彼等を助けようとはしない。生きるだけで精一杯なのだ。辺境の領主とて自ら望んで叛乱軍の援助を受けている筈はないと思うが、背に腹は変えられんのだろう。領民達を飢えさせる訳にはいかんからな。現状では辺境領主は叛乱軍に与して
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