第8話 海が凪ぐ Part.1
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ン言うな!健斗って確かドラムの子か?推し活みたいな?」
「ああ。ライブ、来てくれたんだな?声かけてくれたらよかったのに」
「お前がっ、あの新曲歌うからだろっ?!」
瑞貴はアザレアのことか、と思い桃香に平謝りする。やはりラブソングだというのは気づかれてしまった。
「ま、まさか来てくれるなんて思わなくて…あの曲、次のアルバムに入れたいんだけど、俊哉さんあたりが反対しそうなんだよな。バンドのコンセプトとはズレてるし」
「それはなんていうか、ごめん。私は好きだけどな、あの歌。アルバム入れて欲しいなあ…」
「だったら嬉しい。ま、相談してみる」
「俊哉さんはベースの人か?」
「そうそう。完璧主義者だから、な。何曲ボツにしたことか…ま、不満はないよ。俊哉さん目当てで客足が伸びるし。ベース歴2年目らしいけど」
「あのレベルで2年目?!末恐ろしい…」
「他のバンドメンバーみんな『楽器お化け』って陰で呼ぶんだけど…俺、楽器やらないから分からないんだよ」
「うん、お化けだな。あれは常人なら10年レベル」
「えっ、そんなにか?!凄ぇな」
瑞貴は楽器の演奏経験がないためメンバーの熟練度がわからないが、楽器隊に非常に恵まれているのだと再認識した。
「ああ。そう言えば、この前、仁菜と喧嘩したんだって?大丈夫か?」
「えっ、そんなことまで知ってるのかよ。私は大丈夫。ありがとう」
「おう。健斗が登利亭でバイトしてんだ。あそこ住み込みだし。賄いもたまにもらえるみたいでさ。『瑞貴さん瑞貴さん!この前ライブ観に来てくれたお姉さん、おさげ髪の女の子と飲み物ぶっかけ合ってましたよ!ちじょーのもつれってやつっすかね?!』とかアホなこと言ってたな」
「ははっ…健斗って歳は?」
「17歳。声優の養成学校に行きながらドラム叩いてる」
「仁菜とすばると同い年か。なんか経歴も似てるな」
「言われてみれば確かにな」
3曲目はスリップノットのピープル・イコール・シット。激しいバスドラムとコリー・テイラーのシャウトが車内に流れる。
「またずいぶん激しい曲が来たな」
「俺、大好きでさ。俊哉さんは『そんな不協和音の塊ドブに捨てて来いや』ってお気に召さなかったんだけど。最近は受け入れてて『おい、瑞貴。知ってるか?ヘヴィメタルとクラシックって親和性があるんやで』とか言い出して」
「互いに影響し合ってるんだな」
「ま、バンドの良いところだな。刺激があって楽しいよ」
「バンド、か…」
一瞬、桃香の顔が曇る。ダイヤモンドダストを脱退していることや新しいバンドで活動していることに何か思うことがあるのかもしれない。
「河原木、あのさ…」
「おっ、そろそろ着くんじゃな
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