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邪教、引き継ぎます
第四章
42.帰還、そして
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て意外ではあった。
 ただ彼は、
「私もご老体(・・・)お迎え(・・・)に行く」
 という表現をしていた。ヒースが密かに彼を評価していたことが盗難事件の解決につながっていたため、彼なりの思いがあるのかもしれない――と考察していた。

「オレが手伝ってももいいぞ」
「シェーラさんもだめです。本当はおとなしく寝ていてほしいくらいですよ? お酒も控えめにお願いしますね」
「おれやろっか?」
「タクトさんは元気そうですが……明日からお願いしたいことが山ほどありますので、今日は何もしないでゆっくりしてください」

 すっかり戦闘服が復活したバーサーカーの少女や、その戦闘服の提供者であるタクト。そばに来る者を、フォルは次々と奥へ追い返していく。

「相変わらず要領悪いね。こんな雑用キミがやる必要ないのに」

 仕上げ材をコテで塗り始めたフォルの横で、ボソッと言ったのは、この祠の主・ミグアである。

「皆さん今回は大変でしたし、今日くらいはのんびりしていただきたいなと思うのです」

 白い少女は無愛想に「あっそ」と言った。
 そしてそのまま作業を続けるフォルの横顔を見つめていた。

「あれ、私まずい作業の仕方をしていますか?」
「いや、そんなことないけど」
「……?」

 なおも彼女はジーっとフォルの顔を見ていたが、やがて大きなマフラーを一度触ってから話し始めた。

「海底の洞窟で妖術師の亡霊に遭ったときに、思ったことがあった」
「思ったこと?」
「キミは前に、大灯台でも亡霊に遭ったと言っていた」
「はい。神託を(まっと)うするという強いお気持ちを持たれていた剣士さんでしたよ」
「そういう人たちみたいに、強い思い残しや未練があると、人は亡霊になることがある。じゃあ、キミを息子のように可愛がっていた悪魔神官はどうだったのかな」
「亡霊にはなっていなかったと思いますが」
「それはなぜだろう、と思った。キミから聞いてた当時の状況を考えると、なってもおかしくないのに」
「んー。どうして、でしょうね」

 フォルの手が止まり、首をかしげる。今までそんなことは考えたこともなかったのだ。

「それはね。たぶんフォル君のことが心配じゃなかったからだよ」

 いつのまにかふたたびタクトがそばに来ていた。

「そうなんですか?」
「そう。いい意味で」
「いい意味?」
「うん。実はおれ、フォルくんが頼りないとか弱いとか思ったことが一度もないんだ」

 フォルは驚いたが、白い少女のほうは表情を変えない。

「おれはさ……強靭な肉体があっても意味がない世界にいたからね。竜王のひ孫が言っていたことに少し関係するかもしれないけど、この世界でもこの先、フォルくんのような人間こそを『強い』と定義しち
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