暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第217話:巡り合う策謀
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分1人に査察官の敵愾心を集中させて装者達への負担を少しでも和らげる為だ。そんな彼が、出来ないと分かりつつ旅行の予定を立ててその楽しみを夢想する事を、何故阻む事が出来るのか?
 これには奏も怒りが萎え、彼に対して逆に申し訳ない気持ちが鎌首を擡げてくる。

「わ、悪い……」

 先程翼に対してみせた余裕は何処へやら、自分に対しては潮らしくなる奏の姿に颯人は苦笑すると、彼女の鼻先を軽くデコピンで弾いてやった。

「ッ!? え?」
「な〜にらしくない顔してんだっての。気にすんなよ」
「それは、難しいんじゃないですか? だって颯人さんがこの中で一番大変なのに……」

 気丈に振る舞う颯人にエルフナインがおずおずと異を唱える。何せ彼にはこの後、査察官達からの尋問などが待っているのだ。心配するなと言う方が無理である。
 しかし当の本人は全く気にした様子を見せない。それどころか、したり顔で笑みを浮かべながら腕組みをしていた。

「いやぁ、寧ろこの方がやり易い」
「どういう意味ですか?」

 イマイチ颯人の余裕の理由が分からない。透が首を傾げていると、彼は奏達にウィンクする様に片目を瞑りながら答えた。

「奏は分かってるだろ、俺が誰だか。アイツらは俺を土俵に上げた。その時点で連中は詰んでるって話だよ。まぁ見てなさいって」

 そう言って颯人は鼻歌を歌いながらその場を離れていく。一体何処からあの余裕が出てくるのかが分からず、翼は彼の事を一番よく知る奏に訊ねた。

「ねぇ、奏。颯人さんは一体何を企んでいるの?」
「ん〜、流石にそこまでは。ただまぁ、あのむかつくオッサンがロクでも無い目に遭うだろう事は確実だろうな」

 確証は何もない。彼が詳しい事を話さない以上、奏にもはっきりした事は言えなかった。だがそれでも、彼はきっと何かをやってあのムカつく連中をギャフンと言わせてくれるだろう。
 離れていく颯人の背に、奏はそんな確信を抱くのであった。
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