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金木犀の許嫁
第三十二話 大阪の野球その十一

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「それは」
「そうかも知れません」
「教科書とかに載っていても」
「はい、ですが思い出は」
 それはというと。
「自分の中にある」
「経験したりしたことですか」
「そうかと。同じ時代に生きて」
 そうしてというのだ。
「ある人や出来事を前にしても」
「歴史と思い出がありますか」
「そうかと。年配の方でしたら」
 昭和も古い時代に生まれたというのだ。
「こちらで野村さんそして監督をしておられた鶴岡さんもです」
「観ていたんですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「そしてです」
「思い出ですか」
「難波を歩く野村さんと擦れ違っても」
「思い出なんですね」
「それもまた」
「そうですか」
「こちらではホークスの歴史を学べますが」
 南海時代のそれをというのだ。
「人によってはです」
「思い出を振り返る場所ですか」
「そうです、ですから」
 そうであるからだというのだ。
「メモリアルとあります」
「そうなんですね」
「少なくとも南海グループにとっては」
 それこそというのだ。
「思い出です」
「そうですか」
「ですから」
「そうしたことも頭に入れて」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「観ていきましょう」
「それでは」
 佐京も頷いた、そしてだった。
 五人で南海のことを観ていった、それは彼等にとっては確かに歴史だったがそれでもその傍でだった。
 老人達がだ、こんなことを言っていた。
「ここに来るといつも思い出すな」
「そうだよな」
「子供の頃観たな」
「鶴岡さんだってな」
「あの時ここで皆野球してたな」
「大阪球場でな」
「ここに古書街もあって」
 大阪球場にというのだ。
「スケート場もあってな」
「スパゲティの店もあったな」
「カプリチョーザな」
「あったな」
「それで傍にハードロックカフェあったな」
「あそこも行ったな」
「もうどれもないけれどな、ここには」
 このことは残念そうに話した。
「全部な」
「大阪球場がなんばパークスになってな」
「マウンドがここにあったっていうのはあるけれどな」
「それでもな」
「もうすっかりなくなったな」
「ホークスは福岡に行って」
 そうしてというのだ。
「球場もなくなって」
「店もそれぞれ他の場所に行って」
「なくなったな」
「ここは店多いけれどな」
 それでもというのだ。
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