第二章
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「これは」
「まさにね」
「タイコウチなのに」
「確かに外見は似ていても」
「色もね、けれど」
それでもというのだった。
「タイコウチはお水の中にいるわ」
「ナイル川のね」
「そして毒はないわ」
蠍と違ってというのだ。
「全くね」
「もっと言えば大きさもね」
「蠍の種類によってはね」
「違うわ」
「そうよね」
「とんだ誤解よ」
友人の女神に困った顔で述べた。
「本当にね」
「そう言っていいわね」
「そうよ、けれどね」
「それで司るものが増えてね」
「信仰する人間が増えたから」
「神も信仰してもらわないとね」
「駄目だからね」
そうであるからだというのだ。
「信仰される人間が増えることはいいことよ」
「そうね」
「誤解からだけれど」
頭にあるタイコウチが蠍と間違われたことからというのだ。
「けれどね」
「それでもね」
「ええ、信仰する人間が増えたから」
「いいわね」
「そうなるわ」
こう言うのだった。
「結果としてね」
「結果よしね」
「そうなるわ」
「じゃあこのことは」
「いいとね」
セクメトは結論を述べた。
「言うわ」
「そうなのね」
「誤解されているけれど」
このことは事実だがというのだ。
「それでもね」
「司るものが増えて」
「そして信仰する民も増えたから」
「よしね」
「ええ、それで毒を防ぐことから」
このことからというのだ。
「医療もね」
「司る様になったのね」
「そうなったから」
だからだというのだ。
「タイコウチを蠍と誤解されても」
「いいわね」
「そうよ、ではね」
「これからも」
「神としての務めをね」
これをというのだ。
「果たしていくわ」
「それではね」
バステトもそれならと頷いた、そしてセルケトにワインが入った杯を差し出し自分も飲み共に談笑に入った。
古代エジプトに伝わる話である、セルケトの頭にあったのはタイコウチであって蠍ではなかった、だがそれが誤解されそれがかえって彼女への信仰を広めることになった。世界にはこうしたことも時折あるものであるのかも知れない。
タイコウチ 完
2024・4・13
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