第一章
[2]次話
借金のかたに
今遠山瑞樹は困っていた、彼には莫大な借金があるのだ。
身内の借金保証人になると何とその身内が蒸発した、それで彼が返済することになったが彼にとってはあまりにも巨額でだ。
返すあてはなかった、サラリーマンの彼にはとてもでだ。
妻の弥生黒髪を長く伸ばし切れ長の尾高やな二重の目と整った赤い唇に見事なスタイルの彼女に言った。彼は面長で小さな穏やかな目と薄い唇を持ち一七四位の背で黒髪を清潔な感じでショートにしている。
「参った、本当に」
「返せないわよね」
「そう簡単には。どうしようか」
「働いて返すしかないけれど」
「家も車も売って」
「そうしていくしかないわね」
夫婦でこんな話をしていた、そして借金取りが家に来てそうして何とか返すと言ったが借金取りはこう言った。
「ああ、いいですよ」
「いい?」
「別にお家も車もです」
「売らなくていいですか」
「ご夫婦でそのまま働いて下さい」
借金取りの初老の男は紳士的に言った。
「我々も犯罪者じゃないですから」
「ヤミ金じゃないですか」
「はい、ですが一気に返済する手段もあります」
遠山と弥生にこうも言った。
「ブラックでもなくて」
「といいますと」
「どんなものでしょうか」
「実は知り合いに変わった食通の人がいまして」
それでというのだ。
「大金持ちでその人の為にです」
「お料理ですか?」
「私達シェフじゃないですが」
「いえいえ、味見というか試食をして欲しいのです」
こう言うのだった。
「お二人に」
「試食ですか」
「それをすればいいんですか」
「はい、暫くそちらをしてくれますと」
試食役をというのだ。
「その都度借金は減らしてもらいやがては」
「完済ですか」
「そうしてくれますか」
「如何でしょうか」
「借金をすぐに完済出来るなら」
「それなら」
夫婦はそれならと応えた、そしてだった。
借金取りの申し出を受けることにした、そうしてだった。
実際に試食役をしてみることになった、二人は借金取りの家に行きそこで料理を出されたがそれは。
「えっ、これは」
「一体」
「蝙蝠の内臓を煮たものです」
借金取りは自分達の前の皿の上にある料理を見て目を丸くさせている二人に答えた。
「お醤油で味付けした」
「蝙蝠ですか」
「その内臓ですか」
「アフリカの。じっくり煮ているので寄生虫の心配はありません」
借金取りは二人にこうも話した。
「ご安心下さい」
「そ、そうですか」
「寄生虫はいないんですね」
「それなら食べても安全で」
「食べると借金減りますね」
「はい、召し上がって頂けるなら」
試食役を勤めるならとだ、借金取りは答えた。
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