第二章
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セクメトがまた怒った、すると神々はすぐにだった。
彼女の前に多くの供物を出した、すると。
セクメトは早速貪りだした、肉もパンも野菜も果物も何でも喰らう、魚もそうしたがその時にであった。
セクメトは獅子の頭でだ、こう言った。
「血、血が飲みたいわ」
「血ならここにあるぞ」
トトはこう言ってだった。
赤い液が入った甕を出した、そしてセクメトに言った。
「ふんだんにだ」
「それを飲めばいいのね」
「そうだ、おかわりもある」
この甕だけでなくだ。
「だからな」
「ええ、好きなだけね」
「これを飲むだ」
「血ね、いただくわ」
セクメトはすぐにだった。
トトから甕をひったくる様に受け取るとその中にあるものをごくごくと飲みだした、それを何度もおかわりをしてだった、
飲むとだ、すぐに。
倒れて眠りだした、それを見るとだった。
「何かな」
「急に寝だしたな」
「どうしたんだ」
「まるで酔い潰れた様だ」
「血を飲んだのではないのか」
「それも甕に何杯も」
「あれはどういうことだ」
ラーも不思議に思いトトに尋ねた。
「セクメトは急に酔いはじめたが」
「はい、実はあれは血ではなかったのです」
トトはラーに種明かしをした。
「ビールだったのです」
「そうだったのか」
「はい、ビールをです」
この酒をというのだ。
「果物の液で赤くして」
「血に見える様にしたのか」
「はい、そしてです」
そのうえでというのだ。
「ふんだんにです」
「飲ませたのだな」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「それでだな」
「そのビールをふんだんに飲めば」
そうすればというのだ。
「あの様にです」
「酔い潰れるか」
「しかもふんだんにです」
「供物を食したからな」
「尚更です」
「腹が一杯になってか」
「眠ったのです」
そうなったというのだ。
「彼女も」
「そうなのだな、見事だ」
ラーはトトに微笑んで話した。
「そなたのその知恵はな」
「そう言って頂きますか」
「うむ、ではこれからもな」
「セクメト女神が暴れたなら」
「すぐにだ」
まさにその時にというのだ。
「多くの供物を出してだ」
「赤いビールもですね」
「出そう、そしてな」
そのうえでというのだ。
「収めよう」
「それでは」
トトは微笑んで応えた、そうしてだった。
以後セクメトが暴れそうになるとその様にされた、そうして人々は彼女を暴れさせない様にしたトトの知恵に深く感謝した。そして自分達も赤いビールを飲んで楽しむこともした。エジプトの古い神話である。
赤ビールの力 完
2024・4・
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