第二章
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「全く以て」
「そうですか」
「そうですかではありません、それ位出来ないとです」
己の感情を抑えられなければというのだ。
「誰でも駄目です」
「神としてですか」
「人としてもです」
「ですがこ奴は」
今自分が殴り殺した女神を指差して言った、頭を殴られた女神は仰向けになって昏倒した様になって倒れている。
「穴という穴からですよ」
「穀物を出してですね」
「それをわしに食わせようとしたんですよ」
「それが大気津比売の力です」
天照大神は極めて冷静に答えた。
「別にです」
「何でもないですか」
「はい」
まさにというのだ。
「これといってです」
「そうなんですか」
「不浄ではありません」
弟神にこのことも話した。
「穀物が不浄ですか」
「いえ、とんでもない」
素戔嗚もこのことは否定した。
「出したものが不浄であり」
「食べるものはですね」
「その真逆です」
「大気津比売は不浄ではなくです」
「浄ですか」
「はい、ですから」
そうであってというのだ。
「彼女の話を落ち着いて聞けばです」
「よかったですか」
「はい、そして」
それにというのだった。
「穀物を食べればよかったのですが」
「悪いことをしました」
「極めて悪いことをしました」
弟神を叱った。
「子供ですか、貴方は」
「面目ないです」
「全く。しかし」
「しかし?」
「殺されたのが彼女でよかったです」
女神の躯を見て言った。
「まことに」
「よかったとは」
「御覧なさい」
いぶかしむ弟神に告げた。
「彼女を」
「?何か」
見ればだ、大気津比売の躯は。
つい先程まで死者の顔色だったが次第に赤みがさしてきていた、そして。
動かなかった身体が徐々に動きはじめた、素戔嗚はそれを見て言った。
「まさか」
「そのまさかです、穀物の神です」
「穀物だからですか」
「死んでも蘇るのです」
「またどうして」
「穀物は実り刈り取られ」
そうなりというのだ。
「また実りますね」
「田畑に」
「そうなりますので」
だからだというのだ。
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