第97話 深夜の誘惑
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「あたし、やっぱり結社には入りたくない。例え良い人がいるとしてもリベールにいっぱい迷惑をかけたんだもん。だからあたしはヨシュアをそこから連れ戻したい、でもそれはヨシュアが望んでいない事なの。あたし、ヨシュアに嫌われたくないよ……」
「大丈夫、ヨシュアはエステルを嫌ったりしないよ」
フィーはそう言ってエステルの手を握った。
「エステルの事が大事だからヨシュアは結社に誘ったんでしょ?エステルの事が大好きだから姿を見せたんだよ」
「そうかな……?」
「そうだよ。だからエステルは自分の気持ちをヨシュアにしっかりぶつければいい。
不安そうな顔をするエステルの目を見ながらフィーはほほ笑んだ。
「例えヨシュアにとって大きなお世話でも自分の気持ちを押し殺したりしたらヨシュアは絶対に帰ってこないよ。なら身勝手だとしても自分の想いを貫いた方が良い」
「自分の想いを貫く……」
「うん、人間なんてそうしなきゃ分かり合えないよ。わたしも側にいるから諦めないで、エステル」
「フィー……うん、そうね。あたし、諦めたくない」
エステルもフィーの手を優しく握り返した。
「エステル、これはあくまで俺個人の考えなんだけど、ヨシュアはエステルに自分を止めて欲しいって思ってるんじゃないかな?」
「えっ?」
「ヨシュアが本気を出せば君一人を攫う事だって可能なんだ、でもそうはしなかった。それは君なら自分を止めてくれるって信じてるから自分の過去を話したんだと俺は思うよ」
ヨシュアは世界を恨んでるのかもしれない、でもエステルという存在がこちら側に戻す切っ掛けになると俺は思う。
エステルの暖かさに救われた一番の人間は間違いなくヨシュアだからな。
「……うん、あたし決めた!例えヨシュアに嫌われる事になっても絶対に結社から連れ出してやるんだから!勿論レンだって連れ出して見せるわ!」
「その意気だよ、エステル」
完全に調子を取り戻したエステルを見てフィーは笑みを浮かべた。
「二人ともありがとう、ウジウジ悩むなんてあたしらしくなかったわ」
「そんなことないさ、君も人間なんだ。悩んで当たり前なんだよ。そもそも俺は何もできていないからな、君を支えたのはフィーだ」
「そんなことないわ、リィン君がヨシュアがあたしを信じているからって言ってくれたの凄く嬉しかった!貴方だってあたしの事をちゃんと助けてくれているじゃない!」
「……ははっ、君には適わないな」
「ん、リィンの負けだね」
俺は何もしていないと答えた、だがエステルの言葉を聞いて俺も彼女の力になれたのかと嬉しくなった。
そしてそんな俺の心を読んだのかフィーは負けだと言ってツンツンとお腹を突いてきた。
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