第三十二話 大阪の野球その四
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「鶴岡さんと野村さんの関係をです」
「悪くしていたんですか」
「そうしたふしがありました」
「そうだったんですね」
「何かとあったのです」
鶴岡と野村、杉浦にはというのだ。
「まことに」
「複雑だったんですね」
「三人共です」
幸雄は寂しそうに話した。
「素晴らしい野球人で人格もです」
「よかったんですね」
「野村さんはあれこれ言われますが」
それでもというのだ。
「あの人もです」
「いい人でしたか」
「はい」
そうだったというのだ。
「とても」
「嫌いな人は嫌いますね」
佐京が野村克也という人について言った。
「そういえば」
「あの人はそうですね」
「はい、ですが」
それでもというのだった。
「実は、ですね」
「非常に苦労してきた人です」
「そうだったんですね」
「お父さんは野村さんが生まれる前にです」
まだご母堂のお腹にいた時にだ。
「日中戦争で戦病死しています」
「そうだったんですか」
「そしてご母堂はお身体が弱く」
「それで、ですか」
「お兄さんがタクシーの運転手をして生計を立てていて」
「貧しかったんですね」
「その中でテスト生だったでしょうか」
その立場でというのだ。
「南海に入りクビになりそうでも頑張って」
「ああなったんですね」
「はい、必死に努力をして」
そうしてというのだ。
「キャッチャー、そして四番にです」
「なって」
「ハヤシライスもプロ野球選手になって」
そうなりというのだ。
「それからはじめてです」
「食べたんですね」
「そうでした」
入団してすぐにその美味さに驚き監督であった鶴岡に笑ってプロ野球選手はこうしたものが好きなだけ食べられると笑って言われたという。
「そこまで貧しくその中で」
「苦労してレギュラーになって」
「戦力外になりそうでもしがみついて」
フロントに必死に残してくれと頼んだという。
「ずっと服も買えない」
「そんな中で、ですか」
「レギュラーになり」
「ああしてですか」
「監督にまでなりました」
「そうだったのですね」
「兎角です」
野村克也という人はというのだ。
「苦労してきました」
「そうだったんですね」
「レギュラーになってもです」
それからもというのだ。
「ピッチャーが打たれると怒られるのは」
「キャッチャーですよね」
白華が応えた。
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