第七百六十五話 感謝されずともその九
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「力が及ばないのです」
「それで人では餓鬼を救えないのです」
「浅まし過ぎて」
「そこまで酷いのですね」
「そこまで堕ちるのはそうはないですが」
それでもというのだ。
「堕ちますと」
「そこからですね」
「簡単にはです」
それこそというのだ。
「出られず」
「救えないですね」
「今お話している人は聞けば聞く程そう思えますね」
「残念ですが」
ベッキーも否定しなかった、もっと言えば出来なかった。
「とても」
「そういうことです」
「救われるにもですね」
「堕ちるレベルがです」
「酷いのですね」
「そうですから」
「そこまで堕ちるのも難しいというのは」
ベッキーは蒼白になって言った。
「恐ろしいですね」
「成長するよりもですね」
「そこまで堕ちる方が難しいですね」
「ある程度ならです」
セーラはそのベッキーに話した。
「成長も堕落もです」
「楽ですか」
「簡単に上下します、ですが」
「それでもですね」
「ある程度以上になりますと」
「どうしてもですね」
「はい」
まさにというのだ。
「成長も堕落も難しいです」
「人の域を超えるまでは」
「成長し人の域を超えますと」
そうなると、というのだ。
「悟りといえ仏教ではです」
「涅槃に至る」
「非常に素晴らしいことであり」
そうであってろいうのだ。
「そう簡単にはです」
「至れないですね」
「はい、ですが」
それでもというのだ。
「餓鬼になることも」
「難しいですね」
「はい、まことにそう簡単にはです」
それこそというのだ。
「堕ちません、それだけ人の底はです」
「抜けないですか」
「今お話している人は何の美点も見られないですね」
「どう見ましても」
ベッキーも確かにと頷いた。
「まさに長所、美点と言われるそれをずっとです」
「磨いてこなかった人ですね」
「ただ怠惰で尊大にです」
「生きていただけですね」
「七つの大罪をです」
キリスト教のそれをというのだ、セーラ達はヒンズー教徒であるので当然キリスト教の教えは他宗教のそれという認識になる。
「怠惰、憤怒、嫉妬、大食、傲慢と」
「その五つは少なくともあり」
「それもかなりですね」
「僻む人でもあったそうなのね」
「僻み即ち嫉妬ですね」
「それも備えていて」
そしてというのだ。
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