暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第216話:指輪を担保に
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「あぁ、翼……大丈夫。大丈夫だよ、もう大丈夫」

 翼は恐らく、あの状況で奏を引き留めた……つまり兵士側の立場に立つ形の動きをした事で奏に対して負い目を感じているのだろう。だが奏はそれを責めず、頻りに大丈夫と言う言葉を繰り返した。それは翼に向けての言葉と言うよりは、自分自身に言い聞かせている様に周りには感じられた。

 取り合えずこのままでは埒が明かないので、一行は大人しく颯人と彼を取り囲む兵士達の後に続いて発令所へと向かった。

 するとそこでは、弦十郎を始めとしたオペレーター達が全員持ち場である席から立たされ、更にあちこちに銃を持つ兵士が警戒している光景が広がっていた。それを見て奏達は愕然となり、クリスは納得できない、マリアは信じられないと言いたげに思わず口を開いた。

「まさか、本当に……」
「本部が制圧されるなんて……」

 現在発令所内を実質的に占めているのはS.O.N.G.のオペレーターではなく、恐らくは日本政府から送られた人員であった。二課時代から続く青い制服ではない、赤い制服に身を包んだ者達がオペレーター席に座って何やらコンソールの操作などをしている。

 どう見ても別勢力による制圧としか言いようのない光景であったが、しかしこの場で政府側の責任者だろうカーキ色のスーツに身を包んだ男はマリア達を見下したような目と声色で返した。

「制圧とは不躾な。言葉を知らんのか?」
「しょうがねえだろ、日本語って他の言語に比べりゃ複雑なんだから。マリアはまだマシだぞ、ガルドなんて未だに諺ごちゃ混ぜに覚えてるくらいだぜ」
「今言う事かそれはッ!」
「黙っていろッ!」

 査察官のマリアを小馬鹿にした発言に対して颯人が茶々を入れる。それに対してガルドが反応し、騒がしくなった状況に査察官が声を荒げた。

 話が脱線しそうになったので、弦十郎が大きめに咳払いをして今現在S.O.N.G.が置かれている状況の説明も兼ねて査察官に話し掛けた。

「護国災害派遣法、第6条……日本政府は、日本国内におけるあらゆる特異災害に対して優先的に介入する事が出来る……だったな?」

 確認の意味を込めて弦十郎が言えば、気を取り直した査察官は厭らしい笑みを浮かべながら1枚の書類を取り出して見せた。

「フフン……そうだ。我々が日本政府の代表としてS.O.N.G.に査察を申し込んでいる。威力による制圧と同じに扱ってもらっては困る。世論がザワッとするから本当に困るッ!」

 正式な書類がある以上、この行動は世間的に認可されて然るべき正当なもの。正義は我にありとは言うが、人間自分が絶対に立場が上と分かっていれば性根がどうであれ強く大きく出られる。それが透けて見える査察官の物言いに、颯人は黙ってはいなかった。

「困らせて欲しく
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