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ゾンビみたいだったのが
第一章

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                ゾンビみたいだったのが
 家の火事でだ、小柳明良は全身に大火傷を負ってしまった。一命はとりとめたがそれでもであった。
「これが私なの」
「ああ、助かったがな」
「それでもね」  
 父の勇作と母の沙耶は項垂れて答えた、二人は軽傷だった。
「頭も顔も火傷でな」
「そうなったのよ」
「髪の毛一本もないし火傷の跡が酷くて」
 明良は鏡を見つつ言った。
「ゾンビみたいよ」
「済まない、もっと早く助けられたら」
「お父さんとお母さんがね」
「いえ、私あの時自分のお部屋で寝てたし」
 自宅のというのだ。
「仕方ないわ、急に日がお部屋まできたし」
「治ればいいがな」
「その火傷が」
「こんな火傷治る?」
 あまりにも酷くてだ、明良は思った。
「果たして」
「お金はあるけれどな」
 真面目な顔で黒髪をスポーツ刈りにしている長身痩躯の父は自分達の家が県内で有名な大地主で山や田畑の収益が大きいことから話した。
「しかしな」
「火災保険も出るけれど」
 母も言った、顎の形がよく切れ長の大きな目で眉は細く奇麗なカーブを描き赤い唇は小さい。黒髪はロングでスタイルがいい。明良は母そっくりである。
「けれどね」
「それでもな」
「治してくれるお医者さんいるかしら」
「いないわよね」
 明良はいないと思い絶望した、だが両親はそうした医師を探し。
 幸いいた、その医師は東京にいてだ。すぐに娘を連れて行って診てもらうと。
「大丈夫です」
「娘は戻りますか」
「元の姿に戻れるんですね」
「はい、十年前は無理でしたが」 
 その医師は両親に強い声で答えた。
「今の医学の技術、そして私ならです」
「治せるんですね」
「娘の火傷の跡を」
「そして元の姿に戻れるんですね」
「以前みたいな」
「あの、私今は」 
 明良も言った。
「ゾンビみたいですが」
「そう言うんだね、君は」
「はい、ですが」
「大丈夫だ、安心してくれ」
 これが医師の返事だった。
「今の医学とね」
「お医者さんならですね」
「絶対にだよ」
 若い男の黒髪をセットした顔に傷がある医師だった。
「元の姿に戻れるから」
「そうですか」
「私は失敗しないんだ」
 医師は微笑んでこうも言った。
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