激闘編
第九十五話 下準備 U
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にその権力を行使した事は無いし、またその為に何かを受け取ったりした事はないよ」
「…委員長ご自身は腐敗してはいないと仰るのですね」
「そうだ。私腹を肥やすのが目的なら、一評議員時代にとっくにやっているよ……ヤン提督、有意義な話は尽きる事がないが今日はここまでにしよう。ウィンチェスター君、そしてヤン提督、今日は訪ねて来てくれてありがとう。楽しかったよ」
21:30
ウィンチェスターはトリューニヒトににこやかに謝意を伝え、憮然としたままの私を連れて迎えの地上車に乗り込んだ。私がため息を吐くと、ウィンチェスターもまた大きな息を吐いて、口を開いた。
「どうでしたか、余人を交えないで話してみて」
「傲慢な男だと思ったよ。つい熱くなってしまった。ウィンチェスター、君は平気なのか?というか君は進んで軍を政争に巻き込もうとしている様に見えるんだが」
「うーん…巻き込もうとしている訳ではないんです。巻き込まれて当然、と私は思っているんです」
「巻き込まれて当然だって?軍人は政治に関わってはいけないと私は考えているんだが」
「選挙権の行使はどうなります?軍人は選挙権を行使してはいけないと?」
「それは違うだろう、それは軍人という前に同盟市民として果たさなくてはならない義務だよ」
「でしょう?という事は軍人かどうかに関わらず政治に関与しているんです。そして我々が選んだ政治家…評議員の一部がそれぞれの委員会、委員長として政府を運営している」
「…そうだね」
「そして軍もまた政府の一部です。巻き込まれて当然じゃないですか」
「であればこそ、きちんとけじめをつけなくてはいけないと思うんだけどね」
「それはそうです。ですが、好むと好まざるに関係なくトリューニヒト氏とは関わっていかなくてはなりません」
「…何故だい?出来る事なら関わりたくないんだけどね」
「上司だからですよ」
「そんな事は分かっているさ」
「本当ですか?」
そう言ってウィンチェスターは笑った。本当ですかという訊き方が可笑しくて、釣られて笑ってしまった。
「本当だよ」
ウィンチェスターは個人携帯端末を取り出すと、奥方に連絡を取り出した。
『ちょっとね、ヤンさん家に寄ってから帰るから…うん、うん、そう。先に寝てても構わないよ。じゃあね』
「本部ビルに戻るんじゃないのかい?」
「戻りませんよ。とっくにビュコック長官もパン屋も帰宅していると思いますよ」
「それはそうだろうけど、キャゼルヌ先輩は」
「…あ」
二人とも大笑いしてしまった。
22:30
シルバーブリッジ二十四番街、ヤン・ウェンリー邸
「おかえりなさい、ヤン提……ウィンチェスター副司令長官!いらっしゃいませ!」
帰りが遅くなる事は前もって伝えておいたが
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