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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
激闘編
第九十五話 下準備 U
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らいで、後はどこそこの評議員が某にディベートを渡しているとか聞くに耐えない話ばかりだった。腹が立ったのでつい言ってしまった。
「委員長ご自身はどうなのです?」
「どう…というと?」
「委員長ご自身はそういった進物を受け取った事があるのかなと思いまして」
ズバリ言いましたね、と横でウィンチェスターが茶化したが、言ってしまった以上聞きたくなったのだ。
「あるよ。だが勘違いしないで欲しいのは、私から要求した事はない、という事だ」
「…受け取っている以上、ご自身から…などという事は関係ないのではないですか」

 トリューニヒトは使用人を呼ぶと、皆の食べ終わった食器を下げさせ、ブランデーを用意させた。ウィンチェスターが三人のグラスに氷とブランデーを注いでいる。
「ヤン提督」
「はい」
「君は人に物を頼む時、お礼はしないのかな?」
「謝礼、という事ですか?」
「そうだ。親しい友人や知人なら、ありがとうの一言で済む。だが私に進物を…ディベートと言いたければそれでもいいが、それを持って来る者達は、私の友人ではない。持って来る彼等にしても私の事を友人とは思っていないだろう。その場合、そういう立場の人間に何かを頼む時、形に見える形での謝意を示すのは至極当たり前だと思うのだが」
「詭弁ではないのですか、それは」
「詭弁かね、だが事実だよ。本当に親しい人間同士、友人同士ならディベートなど無くとも親身になって動く筈だし、むしろ形のある物など要らないだろう?ただ、それほど親しくない者同士だから形のある物で謝意を示すのだ。ホールの給仕係やホテルのボーイにチップを渡すのと何ら変わりはないと思うがね」
「それはそうです。ですが公職にある立場の人間がそれを認めてしまったら、それは腐敗政治の一歩ではないのですか」
私の横でウィンチェスターが苦笑いを浮かべていた。もう止めろという事だろう、だがトリューニヒト本人と話す機会などそうある訳でもない、全て聞いてしまいたかった。
「…例えばだが、民衆の望む改革が一部の反対派によって為されなかったとしよう。最後の手段として改革派はその一部の反対派をディベートをもって取り込んだ。その結果、民衆のの望む改革が達成された…これでも腐敗政治と言えるかね?」
「…それこそ詭弁ではありませんか。極論ですよそれは」
「政治とは民衆の、私の立場なら同盟市民の幸福の為に行うものだ。その為には搦手だって私は使う。それはこれからも変わる事はないだろう…ヤン提督、君は腐敗政治の一歩だというかも知れないが、腐敗政治と政治家個人の腐敗を混同していないかね?賄賂が蔓延り、政治家個人が私腹を肥やす事を目的としてその権力を行使する…そしてそれが常態化してその事実を誰も指摘しようとしなくなった状態を政治の腐敗と言うのだと私は思う。私は自分の私腹を肥やす為
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