激闘編
第九十五話 下準備 U
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わって来ますから。委員長、そろそろサンフォード議長との腹の探り合いは止めて下さい」
「そうは言うがね…捕虜交換にしても再出兵にしても、結局軍が関わっているからな。議長は自分の影響力が限定されると考えているんだ」
そう、どっちにしても実行者は軍だ。サンフォード議長本人がどれだけ気負っても、トリューニヒト抜きでは実行は無理なのだ。再出兵が決定した経緯を聞く限り、サンフォード議長は長期政権の維持とトリューニヒトの鼻を明かす為にムーア提督達の提案を飲んだとしか思えない。軍が政治利用されているこの状況を、トリューニヒトはともかく、ウィンチェスターは何とも思わないのだろうか。
「いっその事、再出兵は議長の専管にして、委員長は捕虜交換に専念したらどうですか。捕虜交換は失敗する可能性が少ないですし、失敗したらしたで帝国のせいに出来ます。再出兵はリスクが多すぎる。動員兵力だけ見れば成功させるのは容易いと思うかも知れませんが、成功すれば得点王ですが、失敗したら下野は確実ですよ」
トリューニヒトとウィンチェスターが私を見る。再出兵計画について話せという事だろう…。
「シャンタウまでの進出はかなり難しいと言わざるを得ません。ミューゼル大将率いる五個艦隊を上手く撃破出来ればいいですが、そうなれば必ずオーディンに残るミュッケンベルガー元帥が出てくるでしょう。流石に十個艦隊全てを連れて来る事はないでしょうが、それでも充分に危険です。最悪の場合、ミューゼル軍と対峙している間に十個艦隊に後背を衝かれ挟撃される恐れがあります。それだけではありません、アムリッツァを直接衝かれる可能性もあります。そうなったら再進攻どころではありません」
「発案のあの三提督は自信満々だったがね」
「軍事的に正しくても実行出来るとは限りません、委員長」
「それはそうだ、ヤン提督の言う通りだ。解った、再出兵に関しては議長の専管とする方向で調整する。話を聞く限り、その方が私へのダメージは少なくて済みそうだからね」
「進言を採り上げて頂いてありがとうございます…ヤン提督、ビュコック長官にここでの会話を全て伝えて下さい。再出兵自体は決定事項ですから、なるべく犠牲の出ない作戦案を、と」
聞いていて、この場に居る事が腹立たしくなると同時に情けなくなってきた。軍の政治利用どころか、ウィンチェスターは自ら進んでそれに加担している…。
夕食は、と聞かれ、折角だから頂いて帰りましょう、とウィンチェスターが言うのでそれに従ったものの、早く帰りたくて仕方なかった。家ではユリアンの作ったアイリッシュシチューとシェパーズパイが待っているのだ、私にとってはどんな贅沢な食事と高級なワインよりも、ユリアンの作った夕食の方がありがたいのだ。食事中の会話も、既に報告を受けていた事もあるだろうがフォルゲンでの戦況に僅かに触れたく
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