激闘編
第九十五話 下準備 U
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イネン中将だった。司令官代理として暫定的な指揮を執っている。
「フォルゲンとボーデンにそれぞれ一個艦隊を派遣するとの事です」
チュン総参謀長が答えた。長官の指示だろう、常識的な判断だ。だけど…。
「司令長官は帝国軍の意図をどうお考えですか」
「今のところ現れたのはその六千隻程の艦隊のみらしい。後続の増援が無ければ、戦闘を打ち切っても構わんと思っておるよ。じゃが…敵は何を考えておるのじゃろうな。捕虜交換の予備交渉中だというのに」
そう、帝国は…帝国軍は何を考えているのだろう?
ヤンさんに聞いてみよう。
「ヤン提督はどう思います?」
「うーん、此方の反応を確かめているのだと思います。捕虜交換を本当に行う気があるのかどうか」
成程。おそらくヤンさんの言う通りだろう。敢えて戦端を開く事で捕虜交換に対する此方の本気度を確認しているのだ。ヤンさんは続けた。
「帝国軍にとって、我々がフォルゲン、ボーデンに増援と抑止の為の兵力を派出するのは想定内でしょう。その兵力規模によって、我々が捕虜交換をどの様に考えているか判断するのだと思います。増援規模が小さい、又は帝国の想定内なら、我々の捕虜交換の交渉は本気だと考えるんじゃないでしょうか」
ビュコック長官とパン屋、そしてキャゼさんが深く頷いている。
「帝国の思惑がヤン提督の仰る通りなら、これ以上の増援派出は止めた方がいい、という事ですね。長官、ビロライネン中将にはその様に指示を出します」
ビュコック長官が再び深く頷くのを確認すると、パン屋はそう言って執務室を出て行った。パン屋を目で追いながら、再びヤンが口を開く。
「副司令長官、捕虜交換の方はどうなのです?」
「実務において想定される事はほぼ終了しています。後は捕虜の移動と全権代表が決まればいつでも実施出来ますよ。キャゼルヌ少将のお陰です。来て貰った甲斐がありました」
「それはよかった。で、全権代表はどなたになりそうですか?」
「サンフォード議長かトリューニヒト委員長だと思うのですが、互いに譲らないのですよ。捕虜交換を成功させたら、その政治的功績は大きいですからね。帝国も似た様な状況と聞いています。まあ帝国の場合は面子の問題の様ですけどね」
「同盟側は次の選挙を見据えて代表者が決まらず、帝国側は流亡の政治犯など交渉の余地はない、という事ですか。どっちもどっちですね」
ヤンがため息を吐く。ビュコック長官もどうしようもないという風に首を振る…戦争をしている以上、対外政策が国内政治に直結するのは理解できるけど、もう少し何とかならんもんかねえ…。
「ビュコック長官、アムリッツァが侵されない限りは現状維持でお願いいたします」
「解っておるよ。前線のせいで捕虜交換が有耶無耶になったら、帝国に囚われている者達の家族に恨まれるでな」
「ありがとうご
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