第二章
[8]前話
「ここはね」
「ここは?」
「私が応えるわ」
「敦子ちゃんが?」
「そうするわね」
千佳ににこりと笑って答えた、そしてだった。
その男が丁度来た、そこでイアホン越しに叫んだ。
「手前俺の女に手を出してどうするつもりだ!」
「えっ、俺以外に彼氏出来たの?」
「そうだ、何なら相手してやるがどうだ!」
「な、何だこの人!」
「格闘家だ!それで勝負するか!」
「格闘か!?勝てる訳ないよ!」
イアホンの向こう、部屋の扉の前にいる彼はそう聞いてだった。
飛んで逃げた、敦子はそれを見届けて千佳に言った。
「これでいいわね」
「あの、凄かったわね」
「いや、男声だから」
それでとだ、千佳に微笑んで話した。
「こうしたらいいかなってね」
「思ったの」
「閃いたのよ」
「そうだったのね」
「それでそれが効いたわね」
「ええ、彼氏持ちって思ったら」
千佳はそれならと言った。
「逃げるから」
「揉めるからなのね」
「浮気性だけれど暴力には弱いから」
そうした男だからだというのだ。
「コワモテだと逃げるのよ」
「そう、それじゃあね」
「ええ、もうこれで大丈夫よ」
「力になれてよかったわ」
「有り難うね」
千佳は敦子に笑顔で礼を述べた、実際に以後千佳の元カレが彼女の前に出て来ることはなくなった。
そしてその話をだ、敦子は浜田にすると彼に笑って言われた。
「よかったね、声を気にしても」
「こうしたことがあるから」
「結局はね」
それこそというのだ。
「個性だから」
「気にすることはないわね」
「むしろ役立つから」
今回の様にというのだ。
「気にすることはないよ」
「そうみたいね」
「じゃあこれからは気にしないね」
「ええ、千佳を助けられたからね」
友人である彼女をだ、敦子はにこりと笑って答えた。
「だからね」
「それじゃあそういうことでね」
「もう気にしないわ」
敦子はまたにこりと笑って答えた、そうしてだった。
以後実際に自分の声を気にすることはなくなった、それで人を助けられたし個性だとわかったからだ。そのうえで浜田とも千佳とも親しく付き合っていってやがて浜田と結婚して苗字が変わったのだった。
男声の彼女 完
2024・8・23
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