第二章
[8]前話
「だからね」
「安心していいか」
「ええ、それであんたどうするの?」
里佳子は井岡に尋ねた。
「これから」
「これから?」
「工藤さんに告白するの?」
「俺は何度でも言うぞ」
井岡は背中に赤く燃え上がる炎を背負って答えた。
「振られてもな」
「じゃあ今回もなのね」
「ああ、あらためてな」
「ラブレター工藤さんの下駄箱に入れるのね」
「ああ」
実際にというのだ。
「そうするな」
「わかったわ、じゃあ頑張ってね」
井岡に彼が書いたラブレターを渡して告げた。
「応援はしてあげるわ」
「そうしてくれるんだな」
「人の恋路は邪魔しないけれど嫉妬もしないから」
だからだというのだ。
「応援するわ」
「そうか、お前いい奴だな」
「少なくとも意地悪じゃないつもりよ」
「そうなんだな、じゃあな」
「ええ、頑張ってね」
微笑んで告げてだった。
里佳子は井岡の前を後にした、そしてだった。
彼は次の日あらためてすみれの下駄箱にラブレターを入れた、そうして今度は彼女に校舎裏で告白してだった。
告白を受け入れてもらった、そうして彼女と交際をはじめたが。
「いや、最初は間違えたことはな」
「言ったの?」
「言ったよ、隠しごとしたらな」
それこそとだ、井岡は里佳子に話した。
「カップルではよくないからな」
「また随分と真面目ね」
「親戚で浮気隠して離婚になった馬鹿男いたんだよ」
「ああ、よくあるお話ね」
「だからな」
「間違えて私の下駄箱に入れたこと言ったのね」
「最初はな」
里佳子に対して話した。
「ちゃんと言ったよ」
「言わなくていいお話だと思うけれど、ただね」
それでもというのだった。
「その真面目で素直なところいいわね、そんな子は好かれるから」
「だからか」
「工藤さんと上手くいきそうね」
「そうなんだな」
「ええ、じゃあ引き続き応援するわね」
「有り難うな」
笑顔で話してそうしてだった。
すみれと幸せに交際していった、そして彼女からも素直で真面目だと言われたのだった。
間違えて入れたラブレター 完
2024・8・22
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