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八条学園騒動記
第七百六十五話 感謝されずともその六

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「ですから」
「それではですね」
「救いは、ですね」
「あるとはです」
 その様にはというのだ。
「思えません、親戚の人が倒れても」
「何もしなかった」
「そうなのですか」
「甘やかした御母堂の末期のお世話もです」
 実の親の死期が近付いていた時もというのだ。
「近くにいたというのに」
「何も、ですか」
「しなかったのですか」
「そして自分を咎めそれに怒って殴ってやろうかと言った叔父さんにも」  
 その人にもというのだ。
「倒れた時にそうかで終わりお葬式の時も」
「醜態を晒したのでしょうか」
「その時も」
「そうでした」
 まさにというのだ。
「家族でもないのに上座に上がってお葬式の後の食事会で食べました」
「何と、そんなことをしたのですか」
「あまりにも無作法です」 
 この話にはラメダスもベッキーも表情を変えて驚いた。
「あの、殆どの宗教のお葬式で」
「それこそ私達の知る限りの宗教、宗派で」
「お葬式の後のそうした場ではご家族が上座です」
「亡くなった人のご家族が」
「そしてお食事ともなりますが」
「その人はですか」
「頼まれてもいないのに」
 亡くなった人の家族即ち遺族の人達にというのだ。
「勝手にです」
「上がったのですか」
「そして食事を摂ったのですね」
「しかも自分の残りものをです」 
 食事のそれをというのだ。
「甥御さんに食べるかと上機嫌で言ったそうです」
「自分の残りものを」
「それも無作法ですね」
「確かいい歳ですね」
「その人は」
「五十位の時にです」 
 セーラはおおよその年齢の話もした。
「そうしたのです」
「五十でそれは」
「あまりにも無分別です」
「無分別に過ぎます」
「無作法もあまりですが」
「これがこの世で最も偉い人の行動でしたら」
 セーラは眉を曇らせて話した。
「この世の人達はです」
「神ばかりですね」
「最早」
「そうです」
 そう言っていいと言うのだった。
「私はそう思います」
「何処が偉いのか」 
 ベッキーは全く以て呆れ果てたといった様子で言った、顔だけでなく仕草にもその感情が出てしまっていた。
「わかりません」
「ですから自分勝手にです」
「そう思っているだけですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「その実は」
「そういうことですね」
「勘違い、思い上がりと言えば」
「それを極めていますね」
「左様ですね」
「そうした時はです」
 ベッキーは心から言った。
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