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第百三十九話 姉の忠告その十五
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「もうな」
「というか日本の皇室の方って贅沢されないわよね」
「全くな」 
 越智は断言した。
「明治天皇なんか暖房火鉢一つだぞ」
「全然温もりそうにないわね」
「今だって将軍様の八分の一以下だぞ」
 宮内庁の予算はというのだ。
「そんなのだからな」
「質素よね」
「世界屈指の経済大国っていう日本がそうでな」
「食べものない最貧国っていうあそこが贅沢三昧ね」
「そんなのはな」
 それこそというのだ。
「間違いだよ」
「そう言うしかないわね」
「そうだよ」
 越智はビールを飲んでから力説した。
「皇室の方々今の俺達みたいなことも出来ないぞ」
「プライベートもないし」
「色々しきたりとかもあってな」
「そうなのに」
「北の将軍様はそうでな」
 文字通り山海の珍味と美酒に囲まれて酒池肉林の生活である、これが悪質なジョークではなく現実なのだ。
「それでもっとわからないことにな」
「何がわからないの?」
「日本の皇室は反対でな」
 質素に暮らしておられる方々はというのだ。
「あっちはいいんだよ」
「ああ、いるわねそんな人達」
 富美子はィビール缶片手に応えた。
「完全にアホよね」
「アホもアホでな」
「どうにもならない位ね」
「俺そこまでのアホにはなりたくないよ」
「誰もなりたくないでしょ」
「そこまでアホになったらな」
 それこそというのだ。
「碌な人生歩けないぞ」
「絶対にね」
「変なのに騙されるかな」
 そうして詐欺に遭うか、というのだ。
「自分でおかしなことやってな」
「破滅するわね」
「それで幸せに生きるなんてな」
 それはというと。
「何があってもな」
「出来ないわね」
「絶対にな、多少馬鹿でもアホでもな」
「幸せになれても」
「極端になるとな」
 馬鹿やアホ、即ち愚かであるということだがその愚かさのレベルも極まると、というのである。世の中あらゆることにレベルが存在し愚かさも然りなのだ。
「もうな」
「騙されたり間違えたりで」
「幸せにもなれないんだよ」
「極端な馬鹿にもならないことね」
「アホでもいいな」
「どっちにしろ同じ意味ね」
「ああ、北朝鮮は流石にないな」
 越智はまたこう言った。
「あそこに生まれることも好きになることもな」
「どっちでも幸せになれないわね」
「あんな国の何処がいいのかな」
「聞きたいところよね」
「生まれたいって思う要素もなくてな」
「好きになる要素もないわね」
「ああ、あんなところに幸せはあるか」
 こう言って飲んでだった。
 二人で飲み終わると富美子は美奈代に車で迎えに来てもらってそれに乗って家に帰った。そうして何もなく幸せでいられたのだった。


第百三十九話   完


 
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