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烏と少女の愛情
第一章

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                烏と少女の愛情
 オーストラリアのシドニー近郊で牧場を経営して暮らしているローズ家の娘ルーシーくすんだ長い金髪でグレーの目に整った外見の九歳の彼女は今カササギフエガラスの雛が家の近くの道でうずくまっているのを見た、それで自分そっくりの母のナンシーに言った。
「あの、この娘ね」
「助けましょう」
 母は一も二もなく答えた。
「こうした時に動かないとよ」
「駄目よね」
「人はね」
 絶対にというのだ。
「だからよ」
「有り難う、じゃあね」
「すぐにお家に連れて帰りましょう」
「それじゃあね」
 こう話してだ、母娘は家の外で遊ぶのを中断して雛を家に連れて帰った、雌の彼女をパイと名付けてだった。 
 そうして獣医にも診せて介抱をすると。
「どんどんね」
「よくなってるわね」
 母娘は元気になったパイを見つつ話した。
「もう歩ける様になって」
「あと少しで飛べそうね」
「お父さんもそう言ってるし」
「大丈夫よ、ただね」
 母は娘にここでこう言った。
「パイは私達に懐いてくれたから」
「そうね」
 ルーシーも確かにと頷いた。
「そうなってくれたわね」
「だからね」
 それでというのだ。
「飛び立ってもうちに来るかも知れないから」
「だからなのね」
「サンルームの窓を開けておきましょう」
 今自分達がいるこの部屋をというのだ。
「それで何時でもね」
「うちに戻れる様にするのね」
「そうしましょう」
 こう話してだった。
 一家は実際にそうした、するとパイは飛び立ってもだった。
「カア」
「今日も来てくれたわ」
 ルーシーは学校から帰って家で遊んでいたところで母に言った。
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