第二章
[8]前話
「幸い手頃な値段で買えたから」
「買ったの」
「そうだよ、これから乗ろうね」
「あの、どうしてなの?」
妻は夫に驚きを隠せない顔で問うた。
「赤いスポーツカーなの?」
「母さん昔言っただろ」
夫は妻に笑顔で答えた。
「結婚したての頃な」
「三十年以上前ね」
「テレビを観ていて赤いスポーツカーがドラマの中で出て」
「その時になの」
「こんな車に乗ってみたいってな」
その様にというのだ。
「言ったからな」
「今買ったの」
「これまで家の車は軽四だったな」
「安くて燃費もいいしね」
「スポーツカーを買う余裕もなかったしな」
「けれどなの」
「貯金もしていたし退職金も出たしな」
それでというのだ。
「買える様になったからな」
「それでなのね」
「買ったんだ、じゃあこれからは」
「この車に乗って」
「ドライブしよう」
「私そんなこと言ったか覚えてないけれど」
夫の言葉に笑顔になってだ、妻は答えた。
「けれど嬉しいわ、私の願いを適えてくれて」
「そう言ってくれるんだ」
「ええ、じゃあこれからはね」
「二人でこの車でドライブしよう」
「そうしましょう」
「若い頃は無理だったけれど」
夫は妻にそれでもと話した。
「今は出来るから」
「このスポーツカーでドライブしていいわね」
「出来る様になったんだ、じゃ乗ろう」
「そうしましょう」
二人で笑顔で話した、そしてだった。
早速二人で赤いスポーツカーに乗った、そのうえでドライブを楽しんだ。夫婦はそれからもドライブを楽しんだ。それは若い頃の二人がそうしている様に実に楽しいものだった。
赤いスポーツカーを買った理由 完
2024・8・20
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