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自殺するより逃げろ
第二章
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「会社の評判も調べてな」
「ブラックだとか」
「採用試験とか受けるな、そうしてな」
「他の会社探すことか」
「ああ、少なくとも今の会社は辞めろ」
 絶対にというのだ。
「いいな」
「それがいいか」
「死ぬ位なら逃げろ」
「辞めてか」
「それがいい判断だ、いいな」
「それじゃあ」
 黒川は羽生の言葉に頷いた、そうしてだった。
 実際にもう限界だと思い会社に辞表を出した、すると彼もまた使えないと言われて終わりであった。
 仕事を辞めるとすぐに泥の様に寝て次第に体調も戻って来た、半月位すると次第に視界に色が戻り考えも明るくなってだった。
 再就職先を探した、その結果だった。
「そうか、今の会社はホワイトか」
「残業は殆どなくてあってもちゃんと手当出てね」
「休日出勤もか」
「殆どなくてあっても手当出るよ」
「会社の人間関係もいいか」
「そうなんだ」
 羽生に就職して暫く経ってから現状を聞きに来た彼と一緒に飲みつつ話した。見れば顔色も戻っていてやつれた感じもない。
「凄くね」
「いい会社か」
「うん、頑張れば認めてくれるし」 
 このこともあってというのだ。
「いい会社だよ」
「それは何よりだな」
「そう思うよ、羽生の言った通りにね」
「辞めてよかっただろ」
「続けていてもいいことなかったよ」
「そうだな」
「それで前の会社あまりにブラックで」
 そうであってというのだ。
「悪評が外に出てね」
「評判ガタ落ちか」
「仕事の仕方も酷くて取引先も激減して」
 そうなってというのだ。
「労働基準監督所にもね」
「目を付けられてか」
「取り調べ受けて元社員から過剰労働で訴えられてるよ」
「そりゃ潰れるな」
「多分ね。僕も訴える中に入ってるし」
「じゃあ会社から金貰えよ」
「そうするよ、しかしあの時君の言うこと聞かなかったら」
 黒川はビールを飲みつつ話した。
「今頃どうなっていたか」
「死んでたかもな」
「自殺したかもね」
「だからそうなる前にな」
「逃げることだね」
「死ぬよりずっとましだ、どうにもならないところや奴からは逃げろ」 
 羽生は肴の唐揚げを食べつつ言った、
「そうすることもいいんだよ」
「逃げたら駄目じゃないね」
「それで自殺してどうするんだ」
「そうだね、よくわかったよ」
「ああ、じゃあ今の会社で頑張れよ」
「そうするよ」
 黒川は笑顔で応えた、そうしてだった。
 彼と共にビールを飲んだ、そのビールはとても美味く次の日の会社で働く糧にもなった。彼は今の会社で充実して働き。
 前の会社への訴訟に勝って多くの慰謝料も貰った、そしてその会社が倒産したのを見た。その時には彼はいつも笑顔で明るくなっていた。


自殺するより逃げろ   完
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