第一章
[2]次話
自殺するより逃げろ
ブラック企業だった、文字通り朝早くから真夜中まで碌に休日もなく働き詰めでしかも人間関係も最悪だった。
黒川葉造は入社して三年ですっかり疲れきっていた。痩せ細った顔で大きな目はくぼみショートヘアの黒髪は光沢がなくなっている。顔色は悪く一七二程の身体は?せ細っている。
上司はモラハラパラハラばかりで何かというと社内で怒鳴り声が聞こえ自分もそれを浴びることが多い、兎角だった。
その会社は酷い状況だった、次第に視界に色がなくなってきていた。
鬱になりそれでも働いていた、だが。
大学の同窓会で会った高校からの友人の羽生正章細面で小さな目と黒いセットした髪の毛を持つ一七〇程の背で痩せた彼に驚いた顔で言われた。
「お前大丈夫か?」
「何か最近何も考えられなくなって表情も消えたよ」
黒川は生気のない顔で答えた。
「目の前に色がなくなってきてるよ」
「モノクロかよ」
「うん、何かね。それで時々線路のホームや道路見たら」
「飛び込みたくなるか」
「残業ばかりで休日ないし会社の中怒鳴り声ばかりで」
「ああ、もうその会社辞めろよ」
羽生は真顔で告げた。
「お前自殺も考えるな」
「ふとな」
「それ位ならな」
「もうか」
「辞めろ、もうその会社にいてもな」
そうしてもというのだ。
「いいことなんてな」
「ないか」
「ある筈ないだろ」
絶対にというのだ。
「そんな会社どうせ人は使い捨てだろ」
「そうだよ、代わりは幾らでもいるって」
その様にというのだ。
「上司も言ってるよ、辞める人多いけれど」
「どうせ根性ないとか使えないだろ」
「そう言って名札ゴミ箱に捨てて終わりだよ」
「会社はそこだけじゃない、辞めても行く場所がないとかな」
「思うけれど」
「あのな、そのままじゃ過労死かな」
若しくはというのだ。
「自殺だぞ、死んでどうするんだ」
「それで終わりだよな」
「終わるな、まだ人生長いんだ」
羽生はビールを飲むのを止めて真剣な顔で話した。
「だからな」
「ここはか」
「ああ、もうな」
それこそというのだ。
「辞めろ、それから再就職先探せ」
「死ぬ前にか」
「自殺する前にな、それで就職する前にな」
羽生はさらに話した。
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