第3部
サマンオサ
もう一人の勇者
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皮肉にも月明かりが一番明るいこの場所で、私とルークはお城の裏門のすぐ側の建物に隠れながら、ナギが来るのを待っていた。
「ナギ、まだかな……」
「夜っていっても長いよね。早く来てくれればいいんだけど」
お城の衛兵がいることを警戒して裏門から離れたところで待つことにしたが、近くに衛兵らしき人も見当たらなかった。それどころか、城内もひっそりと静まり返っており、魔物よけの篝火ですらついていない。いくら城壁で囲われていても、あまりに不用心ではないだろうか。
しかしルークによると、それはルークが小さい頃からずっとそうなのだという。今まで良く無事だったものだ。
「そうだ、ルークはお城の中とかは詳しくないの?」
「まさか。お城になんて一度も入ったことないよ。あるとしたら罪を犯して捕まったときだ」
「ああ……、それは入っちゃいけないね」
駄目元で聞いてみたけれど、やっぱりそうだろう。もし知っていれば牢屋のある場所に直接行ってユウリたちと合流できるかもしれないと思ったのだが。
などと考えていると、突然後ろから肩を叩かれた。そして声を出す間もなく口を塞がれる。
「しっ、オレだ」
背後から現れたナギの誘拐犯さながらの登場に、私は心臓が飛び出しそうになった。
ルークも彼の存在には気づかなかったようで、目を丸くしている。おそらくナギは盗賊の技である『忍び足』でも使って私たちのところまでやってきたのだろう。
ナギはすぐにパッと私から手を離した。
「ラーの鏡は?」
「もちろん、バッチリだよ!」
私はラーの鏡をしまってある鞄をバシバシと叩いた。
「おいおい、んな雑に扱うなよ。王様が本物か確かめるための一番大事なアイテムなんだからよ」
普段大雑把ななナギに注意されムッとなりながらも、こっそり鞄の中身をチェックする私。うん、大丈夫。
「この鏡を使って、どうするの?」
「ここじゃ目立つ。説明するからまずはあいつらのところに行こう」
と、ルークの視線に気がついたのか、ナギはルークを見るなり表情を和らげた。
「お前も来てくれたんだな」
「ここまで来て、ミオを一人で行かせるわけにはいかないからね」
「そうか。ありがとな、ルーク」
安堵するように頷くと、ナギは辺りを警戒しながら、私たちを手招きした。
「早速ここから中に入るぞ」
すぐそばの水路の脇に、人一人入るのがやっとなくらいの大きさの小窓があった。外壁と同じ色に塗ってあり、遠目ではこれが扉だとはわからない。ナギによると、ここから牢屋へと通じているらしい。
誰かに見つからないよう、私たちは速やかにその小窓から城の敷地内へと侵入した。通路はかなり狭く、這って進むしかなかった。ナギ、ルーク、私の順番に入ったが、私やナギはともかく、ルークは肩幅が広いのでかなりきつそうだった。
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