第四章
40.青肌の男
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きた。
「竜王だったの!? うおー! でっか!!」
目を輝かせながら驚くタクト。他の者も程度の差こそあれ驚いていた。
海底の洞窟での資料の回収が終了したら、竜王のひ孫のもとへあいさつに行くという話にはなっていた。だがここで会うことになるとは誰も思っていなかった。
「見ておれ」
竜王のひ孫はそう言うと、咆哮をあげた。
あまりにもすさまじい、大きな大きな雄叫びだった。
フォルたちは臓腑がもがれるほどの激しい波動を感じ、全身の筋肉を硬直させた。
「ワタシガ……マモル……ベギラマ」
妖術師も一瞬固まったように見えたが、すぐに竜王のひ孫に杖を向けた。
だが、今度はベギラマを唱えても何も起きなかった。
「よし。効いたな」
竜王のひ孫の声。
祈祷師ケイラスが、何かを察したらしい。空に向けてベギラマを唱えた。
何も起きない。
「私も呪文が使えなくなったのだが」
「少し効きすぎのようじゃな。全員呪文が使えなくなったかもしれぬフハハハ」
満足そうに言うと、竜王のひ孫は、もう一つ咆哮をあげた。
先ほどのものとは、その声色が異なっていた。
声量こそあったものの、攻撃的でなく、柔らかさがあった。やはりフォルたちの体の中には大きく響いてきたが、今度は体の中が温められるような、不思議な感覚がした。
「……」
亡霊の妖術師は杖を下ろしたまま、動きを止めていた。
いったい竜王のひ孫が何をしたのか。それはこの場では本人しかわからない。ただ、妖術師が襲いかかってきそうな雰囲気がなくなったことは間違いないと思われた。
「ほれ。これでよいだろう。言葉をかけたいなら、いまのうちじゃ」
「あ、はい! ミグアさん、ちょっと杖を持っていてもらってもいいですか?」
「大丈夫なの」
「はい。大丈夫です」
フォルは丸腰で妖術師に近づいた。
「私たちは同志です。もう、大丈夫です。ここが大変なことになっていたとは知らず、本当に申し訳ありませんでした。どうか、ゆっくり、お休みください」
そう言って頭を下げると、妖術師の左手――グローブを両手で包むように握った。
妖術師は握られた手を一度見て、それからフォルの顔を見た。
仮面姿なので、そして中身はおそらく生身ではないので、表情はもちろんわからない。
ただ、ほんのわずか、うなずいたように見えた。
「……」
穏やかな白いモヤが、妖術師の仮面やローブの隙間や漏れるように出た。
そのモヤが、上へと昇り、消えていく。
杖が、落ちた。
そして仮面が落ちる。やはり中身は白骨であった。
やがて骨が崩れる音とともに、ローブも床に沈む。
どうやら、無事に、安らか
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