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ある白猫の生涯
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 朝から暑い日だったけど、お昼過ぎに俺は テリトリーの見廻りに出けていた。畑の向こうに あの黒猫がこっちを見ている。しばらく、畑を挟んで睨み合っていたが、そのうち、向こうから眼を逸らして離れて行った。もう、俺にはかなわないと思ったのだろう。

 そして、道路に出て ゆっくりと歩いていると 小さな女の子に出会って

「岩ちゃん 暑いのにお散歩?」

 何軒か先の家の子で、ミナツちゃんも可愛がっている女の子だ。多分、小学生だろう 学校の帰りなのか、体操服の上下に髪の毛は長くて後ろに纏めて野球帽を被っていて、俺の頭と喉元を撫でてくれている。俺も、気持ちよさそうに ゴロゴロと喉を鳴らしていたのだ。俺は、何故かこの子のことが好きなのだ。

「岩ちゃん ウチに来れば良かったのにー ミナツちゃんは忙しいから あんまり構ってもらえないでしょう? すずりならいつも 遊んであげるよ」

『うぅー そーなんだけど ミナツちゃんもいろいろと世話してくれるよ ただ シャワーされるのが多いかなー』

「まぁ 時々 遊びにおいでよー」と、言いながら帰って行った。俺は、あの子の側でも気楽に過ごせるかなーと考えていた。

 坂の下を見ていると、ミナツちゃんが自転車を懸命にこいで上ってきているのが見えた。暑い日だって言うことはわかるんだけど、袖無しのシャツに短いパンツで脚も太腿から丸出しなのだ。

『眩しいんだよー それなりの歳なんだからー そんな恰好でウロウロするなよー』と、見ていると、汗だくでようやく側に来たかと思うと

「ぁー 岩 お出迎え? ちょっと お友達に会ってきたのよ」

『ニャー』『それは 良いんだけどよー 女の子がそんなのって 男が見ると刺激が強すぎるんじゃーない?』

「あぁー 暑いよねー ぐしょぐしょよー シャワー浴びなきゃー 岩も付き合うのよ!」 全く気にしていない様子で・・・

『フガァー』『なに言い出すんじゃー 俺は 汗かいて無いよー』と、言う俺を無理やり抱えて家の中に・・・

「この頃 良い子よねー おとなしくシャワー浴びるもんねー 出たら ご褒美に目刺しあげるね!」

『ファン』と 俺はシャンプーで泡立てられても我慢していた。

 お風呂から出て、ミナツちゃんはスッポリとサマーワンピースを着て頭にタオルを被ったまま、俺を拭いてくれて、目刺しを差し出していて 「フニヤー フガフガ』と喰らいついていると

「岩とこうやっていられるのも この夏で最後ね 多分 来年はもう私は居ないと思う」 と 俺には、理解出来ないことをポツンとつぶやいていたのだ。そして、俺を抱きかかえて頭を撫でてくれていた。だけど、俺は この子を守る使命があるのだ と いつからか 勝手に思う様になっていた。
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