お前とは違う
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蛇に振り回されながら、ウィザードの目は、じっとこちらを見上げる市長を捉えた。
ここまで怪物が暴れているというのに、彼は一切動じていない。
「市長さん! 本当に逃げてください!」
「……すまない。腰が抜けて動けないようだ」
情けないセリフに聞こえるが、市長の言葉とは裏腹に、本人には一切動じている様子はない。両手を後ろに回したまま、じっとグレムリンの腰から伸びるヤマタノオロチを見上げていた。
「すごい度胸だね……ちょっとやそっとじゃ絶望しないかな?」
グレムリンは手の刃を振る。
「年を取ると大概の事では動揺しなくなるものだ。だが、これは流石に命の危機を感じる」
「本当に危ないよ?」
グレムリンはそう言って、指を軽く振る。
すると、二体の蛇が市長へ牙を向く。
「お、お願い……!」
それに対し、蛇に縛られたままのえりかが手を伸ばす。
彼女の浮遊する六つの機械が市長の前へ飛行し、六角形を形成する。その間に形成された見えない壁が、市長を守る盾となる。
「硬いねえ……」
「シールド……トルネード!」
えりかはそのまま、手で盾に指示。
回転する盾は、そのまま弧を描き、ウィザードを拘束する首を斬りつける。
本物のヤマタノオロチと比べて、体が小さい分どうやら耐久性も低いようだ。ウィザードの拘束が緩み、ウィザードの体が落ちる。
「ありがとう!」
「はい……!」
「やってくれるね、折角ハルト君を掴まえたのに」
一方、グレムリンはギロリとえりかを睨みつける。
「先に君を潰した方が良さそうだ」
グレムリンがそう口にした途端、えりかを拘束する蛇の力が強まる。天高く振り上げたえりかの体を、蛇が叩き付けようと……
「させない!」
『ビッグ プリーズ』
ウィザードは即座にビッグの魔法を発動。
巨大化した手が、えりかの体を受け止める。そのまま軽く握り、えりかを拘束する蛇を引きちぎろうとするが、他の蛇の首が二本、ウィザードの左右に並ぶ。
「松菜さん!」
えりかが叫ぶのと同時に、蛇の口からそれぞれ風と毒が吐き出される。
風により勢いの強まった毒を全身に浴び、魔力の体が火花を散らす。
「ぐあっ……ぐっ……!」
えりかの拘束へ対応することが出来ず、ウィザードは巨大化した手を手放してしまう。
膝を折り、動けないでいるうちにも、毒がウィザードの体内を走り回っていく。全身からどんどん体力を奪われていくのを感じながら、ウィザードは顔を上げた。
「哀れだね、ハルト君」
蛇たちには毒を放出させたまま、グレムリンがウィザードに歩み寄る。同じ毒を浴びているが、やはりグレムリンにはこの毒は効かないようだった。
「折角の
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