第68話「タスケテ〜」
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ないというのに。
「貴方は、ガトランティスの指導者である立場と推察する。その貴方が何故、一つの価値観で人を括ろうとする? 人は、そんなちっぽけな存在ではな―――」
「なんと耳触りの良い言葉…だが、それこそがエゴ」
そうわざとらしく強引に遮ったズォーダーが、嗤いながら告げる。
「私は、何年も見てきた。人間の想い―――感情という病から湧き出すエゴを。これこそが、全ての闘争と混乱の源。数多もの知的文明は、この宇宙にとって有害な存在。病巣であると知るがよい」
その言葉、そっくりそのまま返そう。
有害な存在なのは、貴様らガトランティスである。
「終止符を打たねばならん。真実の愛を、この私が真実の愛を示す。テレサの恩寵を以って!」
それに、だ。なんだかんで、感情に冒されいるのはズォーダーも同じ。
「愛」という感情に拘っている時点で、お前も人の事が言えない。
…フフ、笑ってしまう。
笑いの声を漏らさぬよう、気をつけなくてはな。
ふと、私は思うのだ。
ズォーダーは、”何処から視ている”のかを
もしやだが、ズォーダーはレドランズに憑依している訳でなく、肉体を端末のように支配する能力を保有しているのではないのか。
………怖っ!
そう思っていた時だった。ズォーダーの顔を見つめていた私は、白色彗星の姿を認識した。突如として、だ。
幻覚、いやこれは…幻視だろうか。しかし、それにしては妙にリアリティーがある。
白色彗星の姿だけではない。インスタント……名前間違えた。教授を操る男の姿も、私は認識した。
絶対的な力の支配者という雰囲気を強く体現し、髪もやや跳ね返りの強い形となり、他者を圧する目力、更に武闘派を彷彿とさせる筋肉質の肉体。
黒を基調としたスーツと黒色の肩掛けマントを着用し、白の手袋を身に付けた、眉毛と一体化した独特の白髪をしている男の姿を。
間違いない。
このドヤ顔している男こそ、個人の情愛に流されないガトランティスの愛こそが宇宙に秩序と調和をもたらすと主張する―――「大帝ズォーダー」なのだ。
幻視は、音さえ伴った。
遺跡を襲う地鳴りと共に、王座の間より重低音の弾奏を耳にした。パイプオルガンを思わせる音だった。
奏でられる弾奏は転調し速度を増し、ズォーダーの姿が自身の認識から消え失せた瞬間、我がもの顔で進む白色彗星に変化した。
間違いない。
この白色彗星こそが、ドヤ顔しているズォーダーの―――ガトランティスの本拠地なのだ。
そして、だ。
最後となろう幻視を、私は認識した。
金に輝く長髪を衣の代わりに纏った、生まれたままの姿をする美女を。青い星を背にする彼女は跪き、祈りを捧げていた
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